医療 ― お役立ちリンク集
高次機能 ― 局所症状 - 言語
文字言語の障害
◆ 読み書きの成績に影響を与える因子:
文字数、使用頻度、親密度、心像性、複雑性、語彙性(意味を持つかどうか)、読み方
*日本の場合、漢字と仮名で成績が乖離することがあるため、漢字、仮名に分けて検討します。
regular word: つづりの規則に従う規則語
irregular word: つづりの規則に従わない不規則語
regular nonword (pseudoword): つづりの規則に従う非単語
◆ 神経学的分類
・失語性失読・失書
・非失語性失読・失書:口頭言語に全く問題がなく、文字言語だけが障害される状態
純粋失読、純粋失書、失読失書
・Benson & Ardiliaの分類
頭頂側頭性(=失読失書)、後頭葉性(=純粋失読)、前頭葉性、失語性、半側空間性
・Roeltgenの分類
純粋失書、失読失書(=頭頂葉性失書)、失語性失書、失行性失書、空間性失書
◆ 認知心理学的分類
単語・文字の視覚・聴覚認知、文字形態を音に、あるいは音を文字形態に変換する過程、語彙・意味理解の過程などに分けて考える
逐字読み、音韻性失読・失書、語彙性失読・失書などに分類する
二重回路説:語彙・意味処理系と音韻処理系を並列させる考え
Ellis AW, Young AW. Human cognitive neuropsychology. augmented ed. Hove: Psychology Press; 1997
The lexical-semantic route for reading: V1⇒V2⇒V3⇒V4
phonological route for reading: V5⇒V6
The lexical-semantic route for writing: A1⇒A2⇒A3⇒A4
phonological route for writing: A5⇒A6⇒A7
◆ 部位による特徴
・角回
Dejerine以来、失読失書をきたすとされてきたが、角回に限局した病巣の場合には純粋失書となる可能性がある。角回からその後方の外側後頭回にまで病変が広がって初めて読みの障害が出現してくるということが明らかになりつつある。
角回性失読失書は角回・外側後頭回を含み、読みの障害の特徴は仮名の失読である。音韻性錯読が主体であり、仮名1文字の読みもわずかながら間違うことがあり、逐次読みや文字数効果(単語を構成する文字の数が多くなると、読みに時間がかかり、読み誤りも多くなること)がみられる。
これは、おそらく仮名文字の形態処理が後頭葉の腹側(ここの障害で仮名の純粋失読が生じる)だけでなく背側にもまたがって行われていることを示唆したものではないかとされている。
・縁上回
皮質・皮質下病変で伝導失語が出現。
病変が限局すると純粋失書が出現する。この場合、伝導失語に似た仮名の音韻性錯書が主にみられるが、症例によっては漢字書字の方がより障害されていることがある。
角回・外側後頭回~縁上回病変:仮名文字読みで文字の順序を誤るエラーが見られる
縁上回:仮名文字の書き取りで文字順序を誤るエラーが見られる(例.ふしんせつ⇒ふんしせつ)
文字の継時的な音韻処理が障害されるためと推察される
・失行性失書
上頭頂小葉または頭頂間溝周囲の損傷で出現
失書の特徴
1)運動・感覚障害では説明できない字形のくずれがある
2)見本を見て書かせると字形の崩れは幾分改善する
3)文字のつづりや形を口頭で述べたり、タイプしたりするのは可能
4)筆順を誤る
文字の視覚イメージは保たれているのに、それを手の書字運動に変換する過程で障害されている
文字想起困難も伴うことも多い(これは病変が縁上回、上後頭回、楔前部などに及んだ場合顕著)
患者は字が下手になったことを自覚している
筆順のエラーは頭頂間溝の前部の病変で出現
・前頭葉性純粋失書
中前頭回後部を中心とする損傷で仮名の錯書を主体とする失書が出現
錯書の多くは文字の置換や省略であるが、前頭葉病変を反映して保続性の誤り(同じ字画、文字を繰り返し書く)もみられる
病変が下前頭回に及ぶと仮名の想起困難が現れる
・その他
前頭葉内側補足運動野を含む病変:失書。ほとんどの場合発語障害を伴う。
書字障害の特徴は、書字開始の遅れ、字形の崩れ、自己修正、保続、字性錯書など。書き取りよりも自発書字で目立つ
視床:背内側核 (DM)、外側腹側核 (VL)、後外側腹側核 (VPL)の障害で孤立性失書