自分らしい生き方を考える−人生会議 (Advanced Care Planning)−
なぜアドバンストケアプランニングが大切なのでしょうか
誰でも、いつでも、命に関わる大きな病気やケガをする可能性があります。
命の危険が迫った状態である人の約70%が医療・ケアなどを自分で決めたり、望みを人に伝えたりすることが出来ないと言われています。
自らが希望する医療・ケアを受けるためには、大切にしていることや望んでいること、どこで、どのような医療・ケアを望むかを自分自身で前もって考え、周囲の信頼する人たちと話し合い、共有することが重要なのです。
はじめに
自分らしい生き方とは何でしょうか。
そして、自分らしい終わりかたはどのようなものなのでしょうか。
私が医師になったばかりの時代と比べると、医療業界内でも終末期医療に対する考え方は大きく変わってきているのを感じます。
その一翼を担っているのが、高齢化社会に伴う医療費の増大であることは皮肉な感じはします。
とはいえ、それが一律に延命治療をすればいいという考えから、より自分らしい終わり方とはなにかということを模索する時代へと導いてくれたのかもしれません。
終末期の医療に関しては、ある種、正解のないテーラーメイドに近いものがあるように思います。
ただ、残念なことに日本人の風習として、縁起が悪いことは口にしないというのが家族間で終末期の話し合いがなされていないことも多く、本人の意向を想像しながら家族が決定権を持つということが多々あるのも事実です。
ただ、自分の終わり方を考えるといっても、漠然としてしまって、具体的にどうしてよいのかわからないこともあるでしょう。
自分の人生をみつめる過程のなかで、自ずと答えは出てくるかもしれません。
人生の終いかたを家族に委ねるのではなく、自分で決める…それは家族の負担を減らすことにもなります。
そして、逆説的かもしれませんが、自分の人生の終いかたを考えることは、今この瞬間を真剣に大切に生きることにつながると思います。
なにかの参考になれば幸いです。
アドバンス・ケア・プランニングを立ててみよう
自分を知る
大切にしていること
自分の人生をふり返ってみましょう
子どものとき、学生時代、大人になってから
好きだったこと、夢中になったことはなんでしょう
憧れていたもの、逆に嫌だったこと、許せなかったこと
なんでも思いつくまま書いてみましょう
その中に自分が人生で大切にしてきたヒントがあるかもしれません
大きい出来事
今までの人生の中で、心に残る出来事はあったでしょうか
思いつくまま書いてみましょう
楽しかったこと、逆につらかったこと
その中に自分の人生を決めるきっかけがあったかもしれません
家庭・家族
今、誰と一緒に住んでいますか?
その人はどういう人で、何をしているのでしょう。
子ども時代はどういう家庭だったのでしょうか?
学校・仕事
どのような学校生活を送ったのでしょうか?
どのような友達と過ごしたのでしょうか、部活動は何をしていましたか、課外活動はどうでしたか、学校の授業はいかがでしたか、印象に残る先生はいたのでしょうか
当時の夢はなんでしたか、なにか夢中になっていることはあったのでしょうか
思いつくままに書いてみましょう
友人・周りの人
友だちや近所の人、親戚の人についてもふり返ってみましょう。
どのような人たちがいますか、どのような付き合いをしていますか。
思いつくままに書いてみましょう。
自分をふり返ってみていかがでしたか?
自分に関してなにか新しい発見はあったでしょうか?
自分が人生で大切にしてきていることが少しでも見えてきたなら幸いです。
老後は誰とどこで過ごしたいか
自分のことがわかってきたら、次は老後について考えてみましょう。
誰とどこで過ごしたいですか
できるだけ自宅で家族と過ごしたいでしょうか
それとも、誰に気を遣うことなく施設で過ごしたいでしょうか
今の自分が望む医療、闘病の形とは
イメージは
自分が望む医療の形をイメージしてみましょう。
先入観なく思いつくまま書いてみるのがベストです。
もし、どうしてもイメージがつかないといったときには、下記のことを参考にしてみてください。
・あらゆる手段をとって最後まで病気と闘う
・積極的な治療は望まない
・標準的な治療は受けたい
・最先端の治療を受けたい
・どんな状況になっても一日でも長く生きていたい
・子どもが結婚するまでは生きていたい
・口から食べることを第一に考えて治療を受けたい
・できるだけ自然な形で死をむかえたい
・平均余命によって希望が変わる
大切にしたいことは何か
もし、生きることに限りがあることが分かったら大切にしたいことは何でしょう。
家族や友人のそばにいることでしょうか
仕事や社会的な役割が続けられることでしょうか
身の周りのことが自分でできることでしょうか
できる限りの治療が受けられることでしょうか
家族の負担にならないことでしょうか
痛みや苦しみがないことでしょうか
少しでも長く生きるということでしょうか
好きなことができるということでしょうか
ひとりの時間がもてるということでしょうか
自分が経済的に困らないことでしょうか
家族が経済的に困らないことでしょうか
それとも、他に何か大切にしていることがあるのでしょうか
なぜ、それを大切にしているのでしょうか
病気については全て知りたいのでしょうか
自分ですべてのことを決めたいのでしょうか
思いつくままに書いてみましょう
これだけは嫌ということは何か
逆にこれだけは嫌ということはあるでしょうか
自分自身で判断させてもらえないことでしょうか
標準的な治療が受けられないことでしょうか
痛みを十分にとってもらえないことでしょうか
自分らしい生活を妨げられることでしょうか
必要だったとしても苦しい検査を受けることでしょうか
入院生活を強いられることでしょうか
思いつくままに書いてみましょう
自分で意思表示できるとき
自分で意思表示できないとき
自分の代わりに判断してほしい人は
定期的にみなおしてみよう
参考
自分らしい「生き」「死に」を考えるー「私の生き方連絡ノート」を活用してー 自分らしい「生き」「死に」を考える会 編 有限会社EDITEX 2016年
これからの治療・ケアに関する話し合い―アドバンス・ケア・プランニングー
医療者のために:終末期に関するガイドライン