
私たちのなにげない日常には意外なところにストレスが隠れています。
自分ではストレスと感じていなくても、もしかすると知らないうちにストレスがたまっているかもしれません。
そんな日常生活に潜むストレスについてまとめてみました。
1. 過剰負荷環境
私たちの普段の生活は情報に溢れています。
その最たるものが、インターネットだと言われています。
平成26年度の情報通信白書によるとネット利用時間の平均は、平日で77.9分、休日だと86.1分にもなるそうです。
シマンテック社による2012年3月の調査では、5人に1人(19%)が「インターネットがなかったら3時間以内に禁断症状を覚えるだろう」と回答したそうです。
最近、アメリカでは、ネットと常につながっている状況から抜け出し、「オフライン」の休暇をとろうという『デジタルデトックス』というものが流行っています。
現代社会では、インターネット以外にも、テレビ、新聞、雑誌などに加え、電車の中の広告、ネオンなど多くの情報があふれています。
便利である一方、これだけ情報が多すぎるとその情報を処理することが難しくなってしまう『過剰負荷環境』という状況を引き起こしてしまいます。
『過剰負荷環境』によって生じる問題は、単に情報に振り回されて、適切な選択ができなくなるというだけではないようです。
というのも、多くの情報を全て処理するには、膨大なエネルギーが必要です。
そこにエネルギーを費やした結果、本来であったら大切なはずの家庭・仕事・趣味などに心の余裕をもって接することができなくなり、ストレスがたまってきてしまうのです。
では、実際に『過剰負荷環境』に陥ると人はどうなるのでしょうか?
ミルグラムは以下のように述べています。
・それぞれの刺激に対処する時間を短くする(人に何か尋ねられても必要最低限の接触にする)
・重要でない刺激は無視する
・他人に責任転嫁する(困っている人を見ても他の人が助けるだろうと無視する)
・他人と接触せずに仲介機関を利用する
これは、情報過多により前頭葉がオーバーワークになっているからかもしれません。
そのため、前頭葉での処理が追いつかず、結果的に前頭葉の働きが鈍った状態になるのです。
前頭葉の機能が低下すると、きれやすくなるとも言われています。
時には、情報から離れて生活してみるのもいいかもしれません。
デジタルデトックス
インターネット依存度テスト
2. 満員電車はストレスがいっぱい
誰もがストレスに感じるであろう満員電車。
調査会社マクロミルのアンケート調査によると、東京・大阪で通勤通学に1時間以上かけている人は、全体の50%以上。
東京への通勤通学者の86%、大阪への通勤通学者の74%が満員電車に乗ることがあるのだそうです。
このように多くの人が経験している満員電車ですが、未だにこれが好きという方にはお目にかかったことはありません。
実際、ギャバ・ストレス研究センターが実施した意識調査によると、サラリーマン男性にとって1日のうちで最もストレスを感じるのが通勤時の満員電車だそうです。
では、他のストレス場面と比較して、どのくらいストレスになるのでしょうか?
ストレスの指標になる唾液中のクロモグラニンAを測定し、ストレスの程度を調べた実験があります。
クロモグラニンAは、交感神経を反映する指標で、精神的ストレス時に唾液中のクロモグラニンAは同じくストレスの指標になる唾液中のコルチゾールよりも早く上昇してきます。
つまり、コルチゾールよりもリアルタイムに精神的ストレスの程度を知ることができるということです。
20~30代のボランティア22名に対し、ストレス負荷前の状態とストレスがかかっていると思われる次の4つの場面で測定しました。
1) 平日ラッシュ時(午前8時台)のJR東海道線 横浜―新橋間(約21分)に乗車
2) 株主総会など、大勢の前でプレゼンテーションをしなければならないとき
3) 上司から叱責されたとき
4) ジェットコースターを嫌いな人が、都内最大級のジェットコースターに乗ったとき
すると、満員電車に乗車した時のクロモグラニンA量はストレス負荷前4倍以上と最も上昇していました。なんと、「株主総会」「上司からの叱責」「ジェットコースター」等と比較しても2倍以上だったそうです。
他のも結構ストレスかかりそうなのに…。満員電車のストレスってすごいんですね。
そして、毎日それで通勤。地元福井でのドア to ドアの車通勤生活が懐かしいです。
この実験、ギャバ・ストレス研究センターが調べたものなので、もちろん食品に含まれるギャバの効果もみています。
ギャバとは、γアミノ酪酸(GABA:γ Amino Butyric Acid)のことで、植物や動物、わたしたちの体内にも広く存在する、天然アミノ酸のひとつです。主に脳や脊髄で「抑制性の神経伝達物質」として働いています。興奮を鎮めたり、リラックスをもたらしたりする役割を果たします。
そしてこのギャバの効果はというと…あらかじめギャバを摂取して満員電車に乗った場合には、クロモグラニンA量は、他のストレス場面と同程度だったそうです。
つまりは、普段の半分以下になっていたということです。
まぁ、それでも十分ストレスフルな気はしますが。
食品のGABA含有量はこちらを参考に
ギャバが含まれる食品一覧|含有量が高いのは穀物・野菜・果物類
元ネタはこちら
満員電車のストレスは?
3. 冬は心も寒くなる
寒い時期というのは、気分も落ち込みやすいとされています。
というのも、日本のように四季がはっきりしている所では、季節によって脳内のセロトニンの量が変わってしまうのです。
セロトニンというのは、ドーパミンやノルアドレナリンの暴走を抑え、心のバランスをとるのに必要な神経伝達物質です。
そのため、セロトニンが減ってしまうと気持ちが沈みこんでしまうということが起きます。
では、なぜ四季がはっきりしていると、季節によってセロトニンの量が変わってしまうのでしょう。
これには日照時間が関係しています。
オーストラリアBaker心臓研究所のG. W. Lambert氏らが行った実験です。
健康で、うつ病などにかかっていない男性ボランティア101人に対して、セロトニンやその代謝物量と、季節や日照時間との関連を評価しました。
すると、脳内でのセロトニンが入れ替わる速度は、冬に最も遅くなることがわかりました。
さらに、冬という気候の何が関係するのかを調べるために、セロトニンの産生量と日照時間、気温、気圧などとの関係を調べました。
すると、セロトニンの産生量と関係性があったのは日照時間だけだったそうです。
つまり、太陽の光をどれくらい浴びているかで、セロトニンの産生量が変わってきてしまうということです。
ちなみに、脳以外の他の部位で産生されるセロトニン量やセロトニン以外の神経伝達物質には、季節による変動は認められなかったそうです。
では、太陽の光をあまり浴びることができないこれからの季節、どうしたらいいのでしょう。
セロトニンを増やす方法には、他に以下のようなものがあります。
1. リズム運動をする(よく噛むことも含む)
2. 家族や恋人、友人とのふれあい
3. トリプトファンを多く含む食品をとる
元ネタはこちら
https://medical.nikkeibp.co.jp/…/hotne…/archives/221512.html
4. 孤独とストレス
普段の生活で「寂しい」と感じたことはありますか?
シカゴ大学の研究によると、普通の人でも年間で平均48日くらい「寂しい」と感じているそうです。それが本当に孤独な人にもなると、ずっと寂しいと感じているようです。
「いやいや、寂しくなんかないよ。ずっと一人でも平気さ。テレビもネットもあるしね」って、本当は自分の中にある寂しさを無視していると思わぬところで身体を壊すことになるかもしれません。
アメリカのシカゴ大学のジョン・カシオッポ教授が米国心理学会で衝撃的な発表をしています。
なんと、寂しさ(孤独感)はストレスホルモンを増やすというのです。
そのため、免疫力が落ち、血圧が高くなります。それだけではなく、睡眠が浅くなり、うつになるリスクが高くなってしまうのです。高齢者では、認知症が進みやすくなるとも言われています。
世界保健機構WHOも「孤独は、喫煙や肥満以上の健康リスクを伴う」とまで言っています。
それはなぜなのでしょうか?
実際、孤独な人達は、家に引きこもりがちになります。
そのため、「歩く」機会が少なくなってしまいます。また、その心の隙間を埋めるためなのでしょうか、お酒をたくさん飲んだり、甘いものをたくさん食べたりする傾向にあるともいわれています。それだけでなく、別名「幸せホルモン」と言われる『オキシトシン』は、人との密接なかかわりによっても分泌が促されます。そのオキシトシンが少なくなることもその一因かもしれません。
脳とこころの豆知識 - ストレス