音も持つ力」カテゴリーアーカイブ

音と形の関係~ブーバキキ効果~

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先日、東京ガスの車がサイレンを鳴らして走っているのを見かけました。
ガス会社にもガス漏れに緊急対応するための「緊急車両」があるんですね。
初めて知りました。
それにしてもサイレンって聞くとドキッとして思わず見ちゃいます。
音の特性なんでしょうか?

音はある特定のイメージを惹起すると言われています。
ゲシュタルト心理学者の W.ケーラーが見つけ,V.S.ラマチャンドランが広く紹介したもので、『ブーバーキキ効果』と呼ばれています。

これは、曲線的図形と鋭利な図形を見せ、『ブーバー』と『キキ』という言葉がその2つの図形のどちらを連想させるかを聞いた時、90%以上もの人が『ブーバー』という言葉で曲線的図形を連想し、『キキ』という言葉で鋭利な図形を連想するというものです。

そしてこれは、使用する言語や所属する文化、発達段階に関係なく共通してみられるそうです。
つまり、音声に伴うイメージに対して、比較的それに合う図形があるということになります。
そのため、名前を付けるときにもこの性質が影響を与えているのではないかと考えられています。

つまり、なにかを見た時にしっくりくる名前とそうでないものがあるということです。
また、この性質を利用して商品のネーミングを行いマーケティングに活用するということも行われています。
ネーミングの音の響きによりその商品に力強さや静けさ、柔らかさなどをプラスすることになる可能性があるのです。

元ネタはこちら
http://www.psych.or.jp/publication/world_pdf/63/63-30-31.pdf
http://www.myschedule.jp/…/…/source/jpa2014_poster/90919.pdf
http://mednlp.jp/PAPER/2013-09-name.pdf

脳とこころの豆知識 ― その他 - 音の持つ力

音楽で言語処理能力が上がる

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先日、Japan Salsa Congress 2014を見に行ってきました。
すばらしいパフォーマンスに酔いしれた後は、ダンスタイム。サルサ初体験。ぎこちないながらも教えてもらいながら楽しみました。

音楽は脳のいろいろな領域を活性化させるということがわかっています。
音楽で活性化する脳の領域の中には、言葉を処理する時に活性化する領域も含まれています。

アメリカにあるハーバード・メディカルスクールの神経科学者ゴットフリード・シュラーグ博士は、歌に乗せた訓練が言語障害のある脳卒中患者に効果的であるとしています。

ある患者さんは、治療前には問いかけに対して支離滅裂な言葉やうめき声で反応するだけでした。ところが、セラピストが手でリズムをとりながら歌に乗せて発話を促したところ、「ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー」をうたったり、自宅の住所を暗証したり、喉の渇きを訴えたりできたそうです。

治療の効果は、発症時期や脳の損傷の程度によって違うようですが、複数の患者さんが最終的には歌に乗せて新しい単語や語句を学習することができたそうです。なんと短い会話が可能になった患者さんもわずかながらいたそうです。

本来だと連携しない脳の部位が音楽を介して連携したのではないかと推察されています。

脳とこころの豆知識 ― その他 - 音の持つ力

音楽家の脳

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私たちの脳はよく使う機能は発達し、使わない機能は廃れていくとされています。
では、時々、人間業とは思えない素晴らしい技を持っている人達が話題になりますが、そういう人たちの脳は他の人たちと同じなのでしょうか?

もしかすると、ちょっと違っているかもしれません。
実際、プロの音楽家は、普通の人の脳とは少し違うということがわかっています。

2002年のSchneiderらの報告によると、音のピッチやメロディーの処理を行う聴覚野の神経細胞は、音楽家は普通の人よりも数が多く、働きも良かったとしています。
音楽家の一次聴覚野の体積は普通の人と比べると130%大きかったそうです。

しかも、耳から入った音の刺激がその一次聴覚野に到達する経路にも違いがあるそうです。

2007年Musacchiaらは、音楽を聴かせた時、音が伝わる経路である脳幹(延髄~中脳)の働きを脳波を使って調べました。

すると音楽家では、音楽を聴かせた時に反応が大きく、より忠実に応答したのです。
そして、このような特徴は、被験者の音楽訓練期間の長さとも強く相関していたそうです。

実際、音楽の訓練をするとその脳の働きが良くなってくるという報告もあります。

私たちは、それだけ可能性に秘めているということです。
ゆっくりかもしれませんが、使えば必ずその能力は伸びていきます。
そして、楽しんでするということが能力を伸ばす近道になるかもしれません。

元ネタはこちら
http://www.piano.or.jp/report/03edc/brain/2011/07/12_12873.html

脳とこころの豆知識 ― その他 - 音の持つ力

悪口は脳にダメージを与える

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先日、以前にお世話になった職場から思いがけずお礼の連絡をいただきました。
そうやってわざわざ声をかけていただくと嬉しいものですね。

それはともかく、言霊という言葉があるように私たちがふだん何げなく使っている言葉には不思議な力があります。
感謝の言葉をかけられることで嬉しい気持ちになることもあれば、悪口を言われることで嫌な気分になったりもします。

しかし、実は悪口は相手を不快にさせるだけでなく、悪口を言っている人の脳にもダメージを与えると言われています。

フィンランドの Anna-Maija Tolppanen博士が行ったもので、2014年5月28日のAmerican Academy of Neurologyに報告したものです。
平均年齢71歳の1,449人を対象に行った調査です。
ひとりひとりに普段どれくらいゴシップを流したり、人を批判したり、意地悪な態度をとっているかの質問をしました。

高血圧、コレステロール値や喫煙など他の認知症の要因を調整し、他の人への批判や意地悪な態度が認知症とどう関わっているのかを調べました。
すると、人の悪口を言ったり、批判したりする人は、認知症になるリスクが3倍も高かったそうです。

私たちが知らず知らずのうちに言葉からの影響を受けています。
自分が使う言葉は自分が一番聞いているわけですから、当然といえば当然なのかもしれません。

元ネタはこちら
http://www.scienceworldreport.com/articles/15059/20140529/distrusting-cynical-hurting-brain-dementia-linked-distrust.htm

脳とこころの豆知識 ― その他 - 音の持つ力

言葉の不思議

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ふだん何気なく使っている言葉ですが、不思議な表現もありますよね。
例えば、苦い思い出、甘い記憶といった全く味と関係がないことに甘いや苦いといった味を表す言葉が使われます。しかも、これって英語でも「sweet memory」と言ったりなど結構多くの国で共通しているんです

経験や感情を「味覚」に例える方法は、日本語のみならず、多くの言語に共通して見られることがわかっています。実は、こういう表現が使われるようになったのも単なる偶然ではないかもしれません

この心理表現と味覚の関係性を調べた人がいるんですね。
トロント大学のAndersonらによってされた実験です。
苦味、塩味、酸味という三種類の水溶液を舐めてもらって、顔面から筋電図で筋肉の電気的信号を測定して、顔のどの筋肉が収縮しているのかを調べました。すると苦味の場合だけ、鼻のわきにある上唇挙筋という筋肉が収縮したんですね。

それで、次に何をやったかというと、様々なシーンの写真を見た時の上唇挙筋の筋電図を測定し、その筋肉が収縮するかをみました。そうすると嫌な写真を見た時にもこの上唇挙筋が収縮することがわかったんです。
つまり、嫌な写真を見ると苦味を味わった時に似た表情になるということです。

「苦虫を噛み潰したような顔」って表現もありますしね。実際に感じている嫌悪感が強いほど筋肉の収縮も強かったそうですよ。
どういうふうに言葉ができてきたのかはわかりませんが、言葉って不思議ですね。

元ネタはこちら
http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20091124/196997/?ST=career&P=1
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19251631

脳とこころの豆知識 ― その他 - 音の持つ力

ヘビロテしている曲を頭から追い出すには

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私たちは、音楽を聴くことで癒されたり、感情を動かされたりします。
でも、たまに街で流れていた曲が頭の中をぐるぐる回って離れない…っていうことはないでしょうか?
ちなみに、この現象…名前がついています。Earwormというらしいです。
つまり、それだけ多くの人が経験しているってことですよね。

ただ頭の中でヘビロテしている曲を追い出そうとしてもなかなか難しいですよね。
頭からヘビロテしている曲を追い出すにはどうしたらいいのか?実験で調べた人がいます。
ホントにこういうことを調べようとする柔軟な発想はすごいですよね。

この実験を行ったのは、Western Washington大学のIra Hyman教授らです。
で、結果はというと…
ヘビロテしている曲を頭の中から追い出すには...パズルを解くのが効果的だそうです。
5文字程度のアナグラム(文字の順番を入れ替えて別の意味にする)や数独が効果的だそうです。ちなみに、あまり難しすぎるパズルでは効果がないようです。

曲が何回も再生される現象には、脳の認知的資源が関与しており、負荷の少ない作業をしている時に音楽が勝手に再生されるそうですが、逆に、脳への負荷をかけ過ぎでも曲が頻繁に再生されるようです。

ちなみに、その時に脳はどうなっているのか…という事を調べた人もいます。
実際、曲を聴いているわけでもないのに、脳の中をぐるぐる曲が回っている時は聴覚皮質が活性化しているそうです。ここに音楽の記憶が蓄えられている…と推察されています。

How to kill an earworm?

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空間を聞き取る~エコロケーション~

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今日、3月18日は点字ブロックの日らしいですよ。
1967年の今日、岡山市に初めて点字ブロックが敷設されたことから、2010年に制定されたそうです。なんと日本で発明されていたんですね。
道路が狭いので、点字ブロックの上に荷物が置かれていたり…ってこともありますが、改めてその存在意義を見直してみるのもいいかもしれません。

実は、私たちは空間を聞き取っています。
エコロケーションって聞いたことありますか?
自分の発した音が何かにぶつかって跳ね返ってきたものを受信し、それによりぶつかってきたものの位置や特徴を知ることです。

昔はコウモリやイルカなどが持つ特殊な能力として知られていました。
ところが、人間にもそういう能力があることが分かったのです。

1940年代にダレンバックは、感知能力の鋭い視覚障害者はこの能力を使っていることを証明しました。
そして、その後の研究で、視覚障害者だけでなく、経験のない目の見える被験者にもその能力はあり、練習により高められることがわかっています。
もちろん、集中力や真剣さが違うためか、視覚障害者の方がこの能力を使うのに長けています。

この能力を使ってマウンテンバイクを乗りこなすダニエル・キッシュは、この能力を使いこなす指導を行っています。
そして、この能力…どういう人が習得度が高いと思いますか?

なんと意欲の高い人だそうです。
つまり、いつ目が見えなくなったか、ということや現在の年齢よりも、むしろ「動き回る手段としてエコロケーションを使いたい」と思っているかが関係しているそうです。

人って使っていないだけでいろいろな能力を持っているんですね。

下記も参考に
エコロケーションについて
http://www.epochtimes.jp/jp/2011/06/html/d92445.html

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添えるメッセージで香りの印象が変わる

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ふだんどれくらい使う言葉を意識していますか?
私たちが、何気なく使っている言葉には、私たちの想像以上の効果があります。
心の声も他人に向けて発した言葉も、一番聞いているのは自分自身です。

どういうメッセージを添えるかで、香りの印象まで変わってしまうそうです。
カナダのモントリオール大学の心理学者、シモナ・マネスク氏とヨハンネス・フラスネリ氏が、行った実験です。

50人を対象に行われています。
参加者に香りの名前を告げずに、4種類の香り(松、クミン、パルメザンチーズ、ゲラニオール:ゼラニウムの精油に含まれるアルコール)をかいでもらいました。
そして、それぞれの香りをかぐ時に、ポジティブな内容とネガティブな内容のメッセージをパソコン画面にランダムに表示して、参加者に見てもらいながらその香りを評価してもらいました。

ちなみに、どういうメッセージが表示されたかというと……。
松の香りには「松葉」または「古い溶剤」
クミンには「インド料理」または「汚れた服」
パルメザンチーズには「乾いた嘔吐物」
ゲラニオールには「摘みたての花」または「安い香水」
心地よい内容から、思わず鼻をふさぎたくなるようなものまで、さまざまです。

そして、ご想像通り…ポジティブな内容のメッセージを表示した時には、香りの評価は高かったのです。

元ネタはこちら
http://news.nifty.com/cs/item/detail/mnwoman-20140225-mw1815191/1.htm

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育つ環境で言語処理が変わる

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昨年、NHK連続テレビ小説で人気だった「あまちゃん」。東北・北三陸の方言にも注目が集まりましたね。

これと関連して、おもしろい報告を見つけました。
私たち日本人が「雨」と「飴」の違いを区別する時、ピッチの上昇と下降で行っています。
ところが、東北や九州地方の一部などでは、ピッチアクセントを使わない無アクセント方言があります。つまり、「飴」と「雨」、「橋」と「箸」を同じように発音します。

東北南部地方の人と東京の人では、「飴」と「雨」などを聞き分ける時の脳の働きに違いがあるのかどうかを調べました。
するとちゃんと違いがあったんです。

「飴」と「雨」を聞き分ける時、東京の人が言語に関する機能を持つ左半球優位だったのに対して、東北地方の人は左右同程度だったそうです。

つまり、東京の人は「飴」と「雨」を単語の違いとして区別したのに対して、東北地方の人は抑揚の違いとして区別したということです。

「環境が人を育てる」とよく言われますが、育った環境で、言葉を処理する時の脳の部位まで変わっちゃうんですね。

元ネタはこちら
http://www.riken.jp/pr/press/2013/20131019_1/

脳とこころの豆知識 ― その他 - 音の持つ力

オノマトペ~擬音語擬態語が持つ効果~

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先週末、友人主催の「大人の国語」に行ってきました。
『平家物語』の『敦盛の最期』を①知る、②わかる、③使うの3つのステップに分けて教えていただきました。
学生時代は得意じゃなかった国語ですが、経験を重ねた今だからこそ味わえるものがあって、とてもおもしろかったです。物語を通じて、自分や他者、社会について考え、他の人の多様な意見を聞くというのは貴重な経験でした。
昔の言葉の持つ音の響きが、物語の味わい深さを増しているような気がしました。

ところで、私たちは、音が持つ響きによっていろいろなイメージや感情をもつことがあります。

アメリカのケント州のDarryl W Miller博士は、話の中に『音』、つまり擬音語や擬態語を混ぜることで、イメージが促進される事を実験で証明しました。
サウンド効果というそうです。

司会者やキャスター、落語家や咄家さんなど、おしゃべりのプロの人たちは、この擬音語・擬態語を頻繁に使う事で、私たちの頭の中にイメージを描き出すのが得意であるとも言われています。
プレゼンテーションの天才と言われているスティーブ・ジョブズも『オノマトペ』を多用していたそうです。

もともと、日本語では、擬音語・擬態語などの事を総称した『オノマトペ』が、他の外国語に比べて非常に多いとされています。なんと、3倍とも5倍ともいわれています。
すでに、平安時代に書かれた『今昔物語』や『源氏物語』にも、この『オノマトペ』は見られています。

そして、音によって抱く印象には、ある程度の共通認識があるとの指摘もあります。

清音「さらさら」「かたかた」「とんとん」では、清らか、軽快、小さいというイメージを抱き、濁音「ざらざら」「がたがた」「どんどん」では、鈍重、濁り、大きいというイメージがわきます。

だから、相手により鮮やかなイメージを伝えやすいんでしょうね。

調べていたら、こんな商品がありました。個人的にはカルタが気になる…
オノマトペサウンドかるた
https://www.eyeup.co.jp/product/onomatopee.html
オノマトペを利用した言語イメージ判定システム
http://www.open-innovation-portal.com/open/it/onomatopoeia.html

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