
私たちはなにかをしてもらった時、お返しをしなければいけないという気持ちが働きます。
もらいっぱなしだと居心地が悪く感じてしまうんですね。
これは、「返報性の法則(原理)」と呼ばれています。
好意を受けたら好意を、嫌悪の感情を向けられたら嫌悪を相手に返したくなってしまいます。
例えば、デパートなどでよくやっている試食。
試食をする人の割合は、77.1%もいると言われています。そして、試食をした人の4人に3人は、それほど買うつもりもなかったのに、ついつい買ってしまうのだとか…。
なかなか高確率ですね。
これは、試食をすることによって忘れていた欲求を思い出すこと、そして無料で試食したら、つまりそのお返しをしないといけないと思ってしまうことが原因ではないかとされています。
デニス・リーガン博士が行った実験があります。
被験者には、2人1組で「美術鑑賞」という名目に仮装された実験に参加してもらい、絵画の評価をするように指示を出しました。
でも、実際は、2人1組になったうちの1人はサクラ、つまり実験協力者です。
そして、美術鑑賞の合間の休憩時間にサクラがいったん席を立って、飲み物を買って戻ってきます。実は、本当の実験はここからです。
1つ目のパターン(A)では、サクラは”自分の飲み物だけ”買ってきます。
2つめのパターン(B)では、サクラは、”被験者の分の飲み物も”買ってきます。
そして、美術鑑賞後、被験者のサクラに対する好意度を測定します。
さらに、サクラが被験者に「宝くじを買わないか」と持ちかけます。
すると、サクラに対する好意度が高い場合には、パターンAでは平均1.0枚だったのに対し、パターンBでは平均1.9枚。
サクラに対する好意度が低い場合には、パターンAでは平均 0.8枚だったのに対し、パターンBでは1.6枚。
つまり、最初に相手の分の飲み物を買ってきた場合、自分の時だけよりも2倍の宝くじを買ってもらえたというわけです。
Dennis T. Regan. Effect of a favor and liking on compliance. Journal of experimental social psychology 7, 627-639, 1971 http://med.stanford.edu/coi/journal%20articles/Regan_DT-Effects_of_A_Favor_and_Liking_on_Compliance.pdf
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