感情の記憶~認知症の場合~

感情の記憶~認知症の場合~Harmonista111

高齢化社会となってきていますが、ここで問題になってきているのが、『認知症』です。
平成22年の時点で、65歳以上の7人に1人が『認知症』であると言われています。
決して他人事で済まされる数字ではありません。

『認知症』は、よく病名と思われがちですが、病名ではありません。
頭痛や腹痛と同じような症状を表す言葉です。
つまり、『認知症』という症状を表す病気には、いろいろとあって、
その1つが有名な『アルツハイマー病』です。

では、どういった状態になったら『認知症』と診断されるのでしょうか?
これは、「脳や身体の病気が原因で記憶・判断力などの障害がおこり、
普通の社会生活が困難になる状態」を言います。

認知症をきたす病気の多くは治らず、進行していくことが多いのですが、
一部にはビタミンB1欠乏症や甲状腺機能低下症、特発性正常圧水頭症など
治療をすることで治る病気もあります。

認知症のもっとも有名な症状は、「もの忘れ」です。
昔の事はよく覚えているんだけど、新しいものごとを覚えられないといった特徴があります。
これは、新しく記憶を覚えるのに重要な『海馬』と呼ばれる領域が
小さくなっているためにおこってくるとされています。

ところが、認知症の人に嘘をついたり、プライドを傷つけたりしてはいけないということが言われます。
これは、その人自身を大切にするという人道的立場から言われていることではありません。
というのも、何があったかという出来事は忘れていても、
その時に感じた感情の記憶は残っているからと考えられているからです。

川崎幸クリニックの杉山先生が提唱している
「認知症をよく理解するための9大法則・1原理」というものがありますが、
その法則の1つに「感情残存の法則」というのがあります。

これは、『認知症の人がその時抱いた感情は相当時間続き
認知症の人は感情に鋭敏である』というものです。

なぜこういう事が起きるのでしょうか?

これは、感情の記憶というのは『扁桃体』という場所蓄えられるからかもしれません。
つまり、海馬が小さくなって新しいことが覚えられなくなった後も、
扁桃体の働きはまだ残っているので、その時に感じた感情だけは記憶されているということです。

実は、子供の発達はまったく逆です。
まず『扁桃体』が発達し、遅れて『海馬』が発達します。
そのため、3歳以前のはっきりとした記憶はないけれど、
その時に経験した感情の記憶は残っていると言われています。
これが、原因はわからないけど「なんとなく恐い」と感じる要因です。

その人がどういう状態であったとしても、
あんがい本人はわかっているということもあるのかもしれません。

認知症に関しては、こちらも参考に
認知症について

脳とこころの豆知識 - 記憶と学習

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