見えていないけどわかっている~盲視~

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ふだん私たちが見ている世界...もっと正確に言うと見えていると思っている世界というのは、私たちが潜在的に認識している世界のごく一部なのかもしれません。

そう思わざるを得ない現象に『盲視』というものがあります。
と言われても、よほどのマニアックな方でもない限り、聞いたことがないですよね。
不思議な症状『盲視』についてまとめてみました。

【目次】
1.  盲視とは
2. なぜ盲視が起きるのか


1.盲視とは

『盲視』は、『見えていると意識できないのに見えている』現象と定義されています。つまり、脳の障害のために、本人の自覚としては「見えない」状態なのに、テストをすると物体の動きや位置をかなり正確に把握できることを言います。
これは、1973年に脳の視覚野に障害がある D. B.が、その見えないはずの視野にあるモノの位置を当てることに医師が気付いたことから発見されました。もちろん、これは、本人が「見えない」と嘘をついているわけではないですよ。
ちょっと、想像がつきにくいですよね。
実例があった方がわかりやすいと思いますので、「カールソン 神経科学テキスト 脳と行動」に載っていた盲視の方の例を挙げたいと思います(一部省略してます)。

M博士は脳梗塞で視力をほぼ完全に失ったJ氏の検査を行いました。
J氏の見える範囲は視野の中心部のほんのわずかな点状の領域だけでした。
M博士は目の前に座ったJ氏の前に杖を出して「Jさん、まっすぐ前を向いてください。頭を動かしたり目を動かしたりせずに右手を伸ばして、私が持っているものを指さしてください」と告げました。

J氏は初め「私は何も見えません」と怒りました。しかし、最終的に指をさしてみました。すると、J氏の指が杖の端に触ったのです。J氏は、自分は何も見えていないのに、自分で正確に指をさせたことにとても驚きました。

「Jさん、あと何回かやってみましょう」というとM博士は杖の向きを変えて、杖の取手の部分をJ氏に向け「じゃあ、杖の取手を握ってみてください」と言いました。
J氏は手を開いて伸ばし、取手の部分を難なくつかみましだ。M博士は杖を90度回して再び取手を握るよう促しました。J氏は手を持ち上げるにつれ手首を回し、取手の向きにうまく合わせ再び難なく取手をつかみました。

2. なぜ盲視が起きるのか

これは決してJ氏が仮病を使っているわけではありません。
これは、視覚に関わる脳内機構が複数あることから生じるとされています。

私たちは、その中の1つである単純な視覚系によって受け取った情報には顕在的には気づかないそうです。
というのも、単純な視覚系は意識が発達する前に進化したため、意識と関連した領域と連絡を持っていないとされています。

つまり、私たちは視覚情報だけでも自分が認識しているよりはるかに多くの情報を受け取っているということです。実際私たちが見ている世界だけが全てではないということです。

通常、眼の「網膜」で見た情報は、「視床」を経由して、「視覚野」に送られ、ここで初めて「見ている」として意識されます。
ところが、伊佐教授ら研究チームのこれまでの研究成果から、脳梗塞などでこの「視覚野」が障害を受けた場合には、眼の「網膜」からの情報が中脳の「上丘」に入り、そこを介して脳の中に情報が伝わっていくことが分かってきました。
そして、情報がこの経路を使っている場合は、私たちに「見えている」という実感がないのです。

サルを使った実験があります。
視覚野の障害による視覚障害のサルに、日常生活シーンの映像を見せ、そのときの目の動きを測定しました。
日常生活シーンの映像から、「動き」「明るさ」「色(赤―緑)」「色(青―黄)」「傾き」に関わる視覚情報の特徴を分析し、その映像を見ているときの視覚障害サルの目の動きと比較しました。

すると、盲視のサルでも、「動き」[明るさ]「色(赤―緑)」の画像特徴を認識して、そこに目を向けることが分かったのです。
ところが、「傾き」については、盲視のサルでは注視できないことがわかりました。

元ネタはこちら
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2012/06/post-217.html

脳とこころの豆知識 - 認識できるのは潜在意識のごく一部

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