人は探しているものしか見えない

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私たち注意を払っていないものに関しては、たとえそれがすぐ近くにあったとしても驚くほど気づきません。
注意を払っていないものにはどれくらい気づかないものでしょうか。

【目次】
1. 見ているのに気づかない

2. 近くにいても気づかない
3. なぜ気づけないのかー何に注意を向けるかで脳の働きが違ってくるー


1. 見ているのに気づかない

ダニエル・シモンズとクリストファー・チャプリスの2人が行った面白い実験があります。

被験者は、黒いユニフォームを着たチームと白いユニフォームを着たチームがバスケットボールするビデオを見せられます。
そして、白いシャツを着たチームのパスを数えるように指示されます。
ビデオを見終った後に「何か変わったことが起きませんでしたか?」と聞かれます。

実は、このビデオには途中でゴリラの着ぐるみを着た人が登場します。
しかもビデオの真ん中で胸をドンドンと叩いて、自分の存在をアピールまでしています。
しかし、そのゴリラのアピールもむなしく、半数の人はその存在にすら全く気づかないのです。

ちなみにゴリラに気づいた人は、たいていパスの回数を間違って答えたそうです。
つまり、気の毒なことにまじめな人ほどパスを数えることに集中するあまり、ゴリラを見落とす確率が高くなってしまうのです。

私も何人かにこの実験を試してみたのですが、皆おもしろいくらいに気づきません。
そして、気づかなかった人たちは後でゴリラの存在を指摘されたとき、皆一様に「なぜあれに気dかなかったんだろう」と衝撃を受けていました。

これは、難しいタスクに集中しているとき、つまり集中を必要と知るような大切な仕事をしているときほど、脳はその仕事に集中して、それ以外の情報を締め出そうとしているせいではないかとされています。

おもしろいことに、ゴリラに気づかなかった人も視線を分析すると、気づいた人と同じくらいゴリラを見ていたそうです。ゴリラを見ていたのにもかかわらず、つまりゴリラのことは情報として脳に入っていたはずなのに、ゴリラに注意を向けていなかったから気づかなかったのです。

2. 近くにいても気づかない

2009年にウェスタン・ワシントン大学の心理学者たちも似たようなおもしろい実験をしています。
キャンパスを歩く学生を以下の4種類に分けて調べたものです。

第一グループ:周りを気にせず歩いていた
第二グループ:二人連れで、互いに話しながら歩いていた
第三グループ:歩きながら、iPodで音楽を聞いていた
第四グループ:携帯電話でしゃべっていた

そして、突拍子もない服装のピエロが一輪車でそばに寄ってきて、おかしな仕草をしながら周りを周り、去って行きます。

二人組の学生が一番ピエロに気づく確率が高く、最も低かったのが、携帯電話でしゃべっていた学生だそうです。なんと半数も気づかなかったそうです。
ビデオじゃなくて、本当に近くにいたのに…。

3. なぜ気づけないのかー何に注意を向けるかで脳の働きが違ってくるー

私たちが、ふだん何に意識を向けているかで、脳の働きは変わってきます。
カリフォルニア大学バークレー校のジャック・L・ギャラント氏、Tolga Çukur氏らが科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」に発表したものです。

日常の風景を撮影したごく短い映像をつなぎ合わせて30分のビデオにまとめ、それを見ている時の脳の働きをfMRIを用いて調べました。

被験者はビデオの中の人間か乗り物を探すよう指示されました。
すると、人間を探しているときは、脳の大部分が「人間発見器」になったそうです。
つまり、人間に対する感度が上がり、乗り物に対する感度が下がったのです。
そして、もちろん乗り物を探しているときは、脳の大部分が「乗り物発見器」になりました。

さらに、人間を探しているときの被験者の脳は、人間と関連のある猫や植物などにも敏感に反応したそうです。ちなみに、乗り物を探しているときは、時計や建物への感度も上がりました。

つまり、被験者が何に注目しているかによって、脳のほとんどの領域の反応パターンが変化したということです。

何に注目し、何の発見器になりたいですか?

元ネタはこちら
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324826304578466911599349812.html
Attention during natural vision warps semantic representation across the human brain

脳の取扱説明書 p59

錯覚の科学
Talking on a mobile phone, You’re less likely to notice the unicycling clown

脳とこころの豆知識 - 認識できるのは潜在意識のごく一部

 

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