人は社会的動物と言われています。
実際、私たちは日々の生活で多くの人々と関わりを持って過ごしています。
ほぼ一人で過ごしているという人でさえも他の人たちの存在なしでは、生活を行っていくことは難しいでしょう。
そのせいかもしれませんが、私たちが幸せを感じるかどうかには、健康であることと親密な人間関係が築けているかが最も関係しているとされています。
思い返してみてもわかると思いますが、逆に、私たちの悩みのほとんどは人間関係から生じると言われるように、人との関わりはストレスの要因ともなってきます。
ある意味、それだけ私たちは、人と良い関係性を築きたいという共通の願望を持っているということかもしれません。
実際、私たちの脳は人との関わりの中で育つということもわかっています。
これは、すでに他の哺乳類にでもいえることのようです。
Elizabeth Gould博士がラットで行った実験です。
運動は、脳の神経細胞を増やすということがわかっています。そこで、同じ種類のラットに軽く走らせて、環境によって海馬の神経細胞の増え方が違うのかを調べました。
単独で育てた場合と何匹か一緒に一つのカゴで育てた場合について比べたわけです。
すると、同じ種類のラットに同じ運動をさせたにも関わらず、何匹か一緒に一つのカゴで育てた場合の方が、神経細胞の増殖能力が高かったのです。
ただ残念なことに、社会の現場で優位な対人関係にいるものほど神経細胞の増殖能力が高いこともわかっています。優位な対人関係にいるほうがストレスが少ないということなのでしょうか?
ストレスによって海馬の増殖能力は抑えられるといいますし。
ちなみに、海馬の神経細胞の増殖能力を高めるものとしては以下のものがあります。
1. いろいろな刺激に触れる事(豊かな環境):ネズミの飼育箱に遊び道具を入れておくと増殖能力が高まります。
2. 適度のランニング
3. 食べ物をよく噛むこと
4. 社交の場に積極的に出る事
5. ストレスを避ける事
6. 幼児の場合は、母親の愛情をふんだんに受ける事
脳の取扱説明書 p292
Alexis M Stranahan et. al. Social isolation delays the positive effects of running on adult neurogenesis. Nature Neuroscience 9, 526-533, 2006