前頭葉の機能~エリオットの症例から~

前頭葉の機能~エリオットの症例から~Harmonista

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私たちは、日々、意識的にせよ無意識的にせよいろいろな選択をしながら生活しています。
この選択、意思決定に重要な役割を果たしているのが、前頭葉の腹内側部(ふくないそくぶ)と呼ばれる場所です。

ここが障害されると普通ありえないよねと思うような選択をするようになってしまいます。
19世紀まで何の働きをしているのかわからなかった前頭葉が注目されるきっかけとなったのが爆発事故で前頭葉に障害を受けたフィネアス・ゲージという人です。

そして、「現代のフィネアス・ゲージ」と呼ばれるエリオットで、その機能はさらに詳しく調べられることになります。
商社で働いていたエリオットは、よき夫,よき父であり,個人的にも,職業的にも,社会的にも,人の羨むような立場にありました。ところが、前頭葉にできた脳腫瘍を切除したことにより状況は一変します。

手術後もエリオットの知能指数は正常以上。認知や記憶の障害は見られません。
ところが、「社会的知能」という点においては、大きな障害が見られるようになりました。

認知や記憶に問題がないにもかかわらず、ごく簡単なことも自分で決められず、計画を実行に移すこともできなくなりました。朝は自分で起きられず、職場に出ても何から手をつけていいのか分からなくなってしまったのです。急ぎの仕事はほったらかし、重要でない細かな仕事に1日を費やします。

さらには、普通だと身体反応を引き起こすような凄惨な写真を見ても何も感じず、何の反応も示さなかったのです。そして、「残酷なのはわかる。でも嫌な感じはしない」と述べたそうです。

感情を意識にのぼらせる前頭葉の新皮質と、深い無意識の部分で感情を生み出す大脳辺縁系の接続が何らかの形で切れ、わかることと感じることが分離してしまったのです。

元ネタはこちら
http://tmin.igakuken.or.jp/medical/09/frontal3.html

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