服従の心理~ミルグラムの実験~

服従の心理~ミルグラムの実験~Harmonista

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7月1日は、更生保護の日です。
私たちは、閉鎖的環境では、ついつい権威がある人物に従ってしまいます。
これは、冷静に考えれば理不尽であることでさえそうです。

東欧地域の数百万人のユダヤ人を絶滅収容所に輸送する責任者であったアドルフ・アイヒマンが裁判の過程で見せた人間像は、人格異常者などではなく、真摯に「職務」に励む、一介の平凡で小心な公務員の姿であったことは、逆に心理学者たちに衝撃を与えました。

そのことから有名なミルグラムの実験が生まれます。『普通の人でも多くのユダヤ人を強制収容所に送り込んだナチス戦犯になりうるのか?』ということを調べるために行ったものです。1963年にイェール大学のスタンリー・ミルグラムにより報告されました。

被験者は20~50歳の男性で、「生徒役」と「教師役」に分かれ、学習における罰の効果を測定すると説明を受けました。「生徒役」は実は役者さんで、「教師役」だけが本当の被験者です。
「教師役」の人は、「生徒役」の人が受ける痛みがどのようなものか理解してもらうため、最初45ボルトの電気ショックを体験してもらいます。

「教師役」の人は、「生徒役」の人が答えを間違えると電気ショックを流すように指示を受けます。最初は45ボルト、1問間違えるごとに15ボルトずつ電圧の強さをあげるように指示されました。
実際には「生徒役」の人には電気ショックを加えませんが、「生徒役」の人は電流の強さに応じて、苦痛の演技をします。
「教師役」の人が実験の続行を拒否した場合、白衣を着た権威のある博士らしい男性が実験を続行するよう伝えます。4回伝えても以前拒否した場合には、実験は中止されます。

結果はというと、別室で絶叫だけが聞こえる場合、被験者40人中25人までもが、最大ボルト数である450ボルトまで電圧をあげたそうです。
実際に目の前で苦しむ姿を見せた場合でも、40人中12人が最大ボルト数まで電圧をあげました。

かなり衝撃的ですよね。
特に、被験者がもうすでに実験を開始していた場合には実験を拒否するのが難しいそうです。
というのも、途中で実験続行を拒否するという事が、自分がすでに行っていることを間違っていると認めることにもなるからではないかと推察されています。

同様に宣伝文句が不当であったとしても、商品購入後もまだ宣伝文句を信じる傾向にあります。
自分は商品を買う際に正しい選択をしたと信じたいために、自分自身をだまし、その商品の優位性を信じ続けるといったこともみられるそうです。
自分は大丈夫…と思わずに、いったん決めた事でも、その都度、改めて選択するようにしたいですね。

こちらは、2004年に実際にアメリカで起きた事件をもとにした映画
「コンプライアンス 服従の心理」の予告篇です。
http://www.youtube.com/watch?v=84FajmmNTRs

脳とこころの豆知識 ― 不合理な行動

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