食事を味わうということ~味覚以外の感覚も使っている~

食事を味わうということ~味覚以外の感覚も使っている~Harmonista154

日々の忙しい生活では、ついつい食事を味わうということがおろそかになってしまいます。
特に私の場合は職業病でしょうか。
食事中でも突然仕事に呼び戻されることもあったので、早く食べる習慣がついてしまいました。

忙しい人にありがちな行動として、仕事をしながら食事をしたり、時間がなくて急いで食べたりというのがありますが、そういう食事はあまりお勧めできません。
というのも、そういう食事では、満足感が得られないため、ついつい食べ過ぎるのではないかと言われています。

私たちが食事を味わうといったとき、味覚以外の感覚も使っています。
嗅覚だけでなく、視覚、聴覚、触覚など他の感覚も味覚に影響を与えているのです。
味覚に影響を与えるものについてまとめてみました。

1. 見た目が味に与える影響ー味覚と視覚の関係
2. 音が味に与える影響ー聴覚と視覚の関係
3. 音楽が味に与える影響
3. 価格が味に与える影響


1. 見た目が味に与える影響ー味覚と視覚の関係

見た目が味に影響を与えることは、美しく彩りよく盛りつけられた料理を思い出してもらえば分かると思います。
霊長類に関する研究でも、食べ物を見ることで味に反応するのと同じ細胞群が反応し、食欲に関連するといわれている視床下部も活性化してくるということが分かっています。

では、実際に見た目がどれくらい私たちの味覚に影響を与えているのでしょうか?
市販のフルーツ味飲料(チェリー、オレンジ、ライム、グレープ)を使った実験です。
これらをグラスで出されて飲んだ時、何を飲んだか分からないことは、まずないと思います。

ところが、このジュースを色が見えない状態で出されると、正答率が20%にも下がってしまうらしいのです。
もちろん、においも味も変わってはいません。単に色という資格の情報がなくなるだけでも何の味なのかわからなくなるわけですから、当然、本来の色と違う色に変えたらどうなるか、容易に想像がつきます。
さらに、ジュースの味の濃さも見た目で左右されます。

同じような結果は、人工フルーツ飲料だけではなく、ケーキ、クッキー、シャーベット、カスタード、キャンディーでも確認されています。
しかも、カスタードは見た目の質感によってなめらかさや美味しさの判断が左右されるそうです。
これは、実験前に味と色は一致していないと聞かされていても変わらないそうです。

そういえば、以前、テレビ番組で目隠しをして、食材をあてるという企画がありましたが、みなさん結構間違っていました。

脳の取扱説明書 P118

DuBBose C.N. Effects of colorants and flavorants on identification, perceived flavor intensity, and hedonic quality of fruit-flavored beverages and cake. Journal of food science, 45: 1393-1399, 1415, 1980

2. 音が味に与える影響ー聴覚と視覚の関係

視覚だけではなく、音も味に影響を与えています。
それを調べた実験があります。

被験者には知らせていませんが、サイズ、形、厚さ、質感、すべて同じポテトチップス(プリングルス)を使っています。
オックスフォード大学のマッシミリアーノ・ザンピーニ博士とトレント大学のチャーチルズ・スペンス博士が行ったものです。
90枚のプリングルスを被験者に噛んでもらいます。

被験者は1枚ごとに1回噛み、割れたチップスは吐き出してもらいます。
被験者の口の前にマイクが置かれ、噛むときの音を加工して同時再生したものを、ヘッドフォンを通じて被験者に聞かせます。

そして、被験者には、それぞれのポテトチップスがどのくらいパリッとしていて新鮮かを判断してもらいます。

すると、大きくてはっきり聞こえる音ほどチップスが新鮮でパリッと感じられ、小さめでやや鈍い音だと古くて湿気っているように感じられるという結果が報告されました。

実験後、被験者は同じプリングルスだという真実を知らされて、すごく驚いたそうです。
それくらい、味を判断するときに聴覚に頼っているということです。

3. 音楽が味に与える影響

食事の時にかかっている音楽にさえも味覚を左右する効果があるそうなのです。
アメリカのアーカンソー大学のハン・ソッキュ・ソ氏が行った実験です。
同じ楽譜をクラシック、ジャズ、ヒップホップ、ロックにアレンジし直し、99人の被験者たちには、それぞれの音楽を聞きながら同じ場所でミルクチョコレートを食べてもらいました。

すると、同じミルクチョコレートを食べているのにもかかわらず、音楽のジャンルによって、美味しく感じられたり、そうでなかったりしたそうなのです。びっくりですよね。
ちなみに…ジャズだとよりミルクチョコレートを美味しく感じ、ヒップホップだとそうじゃなかったそうです。食べ物によっても違うんですかね…気になるところです。

ドイツのドレスデン工科大学のトーマス・フンメル氏も、「音楽効果は大きな影響力を持つ。音楽により食べるのが早くなったり、空腹感が続いたり、美味しさが違ったり、普段の食事が美味しく感じられたりする。」と述べています。

音楽によってワインの味が違って感じるという報告もあります。

オックスフォード大学が3000人もの被験者を対象にして行った研究によると赤い照明にして甘い(流れるような柔らかい)クラッシック音楽をかけるとワインが美味しくなるとか…。
そして、その時使われた音楽というのが、『ジムノペディ第二番』。
https://www.youtube.com/watch?v=kKxbSW32wEA
9%も楽しさが増すだけでなく、ワインがよりフルーティーに感じるそうです。

逆に、緑のライト、酸っぱい(スタッカート)音楽のもとでは、ワインはより新鮮さが増し、強さが減るそうです。その時使われた音楽が、『Superscriptio by Brian Ferneyhough』
http://www.youtube.com/watch?v=dYnYimo8z2Q

私たちは、ワインと一緒に空間も味わっているんですね。

http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2662251/Best-way-drink-wine-In-red-room-piano-Changing-colour-music-environment-improves-taste-15-cent.html

4. 価格が味に与える影響

ワインは好きですか?
人間って単純だなぁって思うワインを使った実験があります。

カリフォルニア工科大学のHilke Plassmann博士が行ったものです。
何をしたかというと、20人の被験者に、ワインの価格を教えた後にワインを飲んでもらったんですね。そして、その時の脳の活動をfMRIを使って調べました。

被験者には「今から5種類のワインを飲んでもらいます」と告げていますが、実際には3種類のワインしか用意していません。その中から適当に5回選んで渡して、飲んでもらいます。教える価格もデタラメです。

その結果がおもしろいのです。
なんと、教えられた価格が高ければ高いほど、「知的快楽」を生み出すとされる脳の内側眼窩皮質という場所が強く活動していたのです。
味や香りだけでなく、そんなものにまで反応してしまうんですね。

高いと言われるとなんだかおいしく感じるのはそのせいなんでしょうか…
脳って単純...というか、ある意味正直ですよね。

脳の取扱説明書 p119

http://www.pnas.org/content/105/3/1050.full

下記も参考に
食べ過ぎない食習慣を作る「五感で味わう食事法」
http://www.earthinus.com/2010/05/how-to-master-the-art-of-mindful-eating.html

脳とこころの豆知識 ― その他

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