子どもに最も必要なものは親の愛

子どもに最も必要なものは親の愛Harmonista160

私たちは親の影響を強く受けています。特に小さな子どもにとって親の愛情が大切であるということに疑いを抱く人は少ないと思います。

それは、人間だけではなく、動物すべてにおいていえることです。

実際、ラットで行われた実験によると、面倒見のいい母ラットに育てられたラットはストレスに強くなるといわれています。
では、面倒見のいい母ラットに育てられた場合と面倒見の悪い母ラットに育てられた場合では具体的に何が違ってくるのでしょうか。

この両者の違いは、脳内のストレスホルモンとしても知られる糖質コルチコイドの受容体の数にあるようです。
面倒見のいい母ラットに育てられたラットでは、糖質コルチコイド受容体の数が多いということがわかっています。

その結果、少ない糖質コルチコイドで満足し、もうこれ以上、ストレスホルモンでもある糖質コルチコイドを作らないように指令を送ります。つまり、ストレスに強い体質になるというわけです。

とはいえ、この実験には、1つ問題点があります。
それは、遺伝です。つまり、育て方の問題ではなく、このラットが、もともと受容体の数が少ない家系だったのではないかという疑問がわくわけです。

これは、その後の実験から遺伝の問題ではないということがわかっています。
その実験では、面倒見の良い母ラットに実子ラットだけでなく、面倒見の悪い母ラットから生まれた養子ラットも育ててもらいました。
そして、その実子ラットと養子ラットの糖質コルチコイド受容体の数を調べたわけです。
つまり、遺伝子は違うけれど、同じようによく面倒をみてもらったらどうなるのかということをみたわけです。

すると、実子ラットも養子ラットも糖質コルチコイド受容体の数は同じくらいだったそうです。つまり、遺伝は関係していなかったようです。
ストレスに強い家系というわけではなく、よくめんどうをみてもらったからストレスに強くなったということです。

そして、想像通り、面倒見のいい母ラットから生まれて、面倒見の悪い養母ラットに育てられた場合でも同様のことがおこります。
つまり、面倒見の悪い母ラットに育てられると、実子ラットだろうが、養子ラットだろうが、同じくらい糖質コルチコイド受容体の数は少なかったそうです。

それくらい、愛情を持って接するという事って大切なのかもしれません。
特に脳が育つ子ども時代には…。

では、これがラットではなく、人間であったらどうでしょう。
『子どもは社会的、精神的発達を正常に行うためには、少なくとも1人の養育者と親密な関係を維持しなければならない。それがないと子どもは社会的、心理学的な問題を抱えるようになる』と言われています。

この養育者との間の『絆』のことを『愛着(アタッチメント)』といい、この理論はアタッチメント理論(愛着理論)と呼ばれています。
この理論は、20世紀中ごろにJ. Bowlbyによって確立され、その後もいろいろと研究されています。

Bowlbyは、愛着(アタッチメント)の発達を次の4つの段階に分けています。
第一段階(生後3ヶ月間):自分と他者(養育者)との分化が不十分。愛着はまだ形成されず、だれに対しても同じように泣いたり微笑したりする。
第二段階(生後6ケ月頃まで):母親に対して、特によく微笑し、より多く凝視する。
第三段階(2、3歳頃まで):母親を安全基地として、母親から一定の範囲内では、安心して行動したり探索したりする。母親からの距離は次第に遠くなる。
第四段階(3歳以上):身体的接触を必要としなくなり、母親の感情や動機を洞察し、協調性が形成されてゆく。

つまり、その子の面倒を主にみている人が、子どもが動揺するときに常に応えて、子どもが快適に感じられると、愛着が正常に発達していきます。
すると、子どもは必要なときには、重要な人々が応えて、手を差し伸べてくれるという信頼の基盤を固め、発展させることができるのだそうです。

そして、身近な人が快適さを常に与えてくれると感じている子どもはやがて、世界は善意の人々がいる素晴らしいところだと認識するようになるというのです。
当然、実りある人間関係を築きやすくなります。

更には、物事を楽観的に捉えられるようになるといわれています。何事がおきてもきっと対処できると考える傾向が強く、ストレスを感じにくいのです。
そして、子どものときにかけがえのない存在として、愛されていると、自分が強く、有能であり、愛される存在であると認識しやすいようです。
そうすると、自分で自分を認められるため、わざわざ他人に認めてもらう必要もありません。

それくらい乳幼児期の養育者の愛情は大切なものだということです。
ただ、大人になってからでもある程度は脳の機能は発達します。

そのため、乳幼児期を過ぎてからでも、その人にとって重要な人物とのかかわりの中で、『自分がどういう状態であっても認められる』という認識が持てるようになれば、時間はかかりますが同じようにその発達を促すことはできます。

元ネタはこちら
Bowlbyの愛着理論

脳とこころの豆知識 ― 脳の発達から子供を理解する

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