好き嫌いができるわけ

好き嫌いができるわけHarmonista156

【目次】
1. 子どもはどうして甘いものが好きなのか
2. 好き嫌いができるわけー味覚嫌悪学習(ガルシア効果)-
3. 好き嫌いの克服法ーかっこいい名前をつけるー


私たちの味覚には、甘味、酸味、苦味、塩味、うま味という5種類の受容体があります。
人間だけでなく、脊椎動物は5種類全てを感じることができますが、なぜかネコ科は例外で甘味を感じられないそうです。

そして、この甘味の受容器は、食物検出器と考えられています。
というのも、甘味のある食物は、ふつうは栄養があり、安全であることが多いからです。
そのためでしょうか、子どもは甘いものが好きな傾向がみられます。

ちなみに塩味は身体に必須な塩化ナトリウムを検出し、うま味は重要な栄養素であるたんぱくに含まれるグルタミン酸を検出します。

また、食べ物の好みは年とともにかわります。たとえば、子どもは酸っぱいものや苦いものが苦手な傾向があります。
実は、これにはちゃんとした理由があるのです。

酸っぱいもの、つまり酸味は、本来、微生物による発酵が進んでいて毒素を出していたり、果物でもまだ熟していなかったりすることがよくあります。
そして、苦味のある食物には、毒性を持つ植物アルカロイドが含まれていたりもします。

つまり、この二つ(特に苦味)は、本能的に避けられる味とされています。
そのためか、苦味は他の味に比べて、ごくわずかな量でも感知することができます。
まぁ、自分の身を守るために備わっているものともいえるのでしょうか。

では、どのようにして、私たちは酸っぱいものや苦いものが好きになっていくのでしょうか?
これは、食体験を通して好きになっていくと考えられています。

つまり、お父さんやお母さんが目の前で、酸っぱいものや苦いものを美味しそうに食べているというのが大切なようです。そのことによって、酸っぱいものや苦いものが、安全でおいしいものであることを学習していくのです。
だから「大人の味」というのかもしれません。

2. 好き嫌いができるわけー味覚嫌悪学習(ガルシア効果)-

調子が悪い時に何か食べた直後に気持ち悪くなったり、吐いたりなどという経験をした場合には、それまで好きだった食べ物が嫌いになるということもあります。
これは、実験で調べられています。なんと『味覚嫌悪学習(ガルシア効果)』という名前までついています。

1967年にGarciaとKoellが報告したラットを使って調べた実験です
ラットに、食べるとすぐに具合が悪くなる物質を入れた甘い液体を与えます。その経験をしたラットは、甘い液体に惹かれてもそれを飲もうとしなくなったそうです。

食物を食べて吐き気を催した場合、生き残るためには、それが毒かもしれないということを覚えておく必要があります。そのため、味覚嫌悪学習が生存因子として働きます。
その結果、私たちは毒かもしれない魅惑的な食べ物を避けることができるようになるわけです。

これは生き残るためには大切なことです。そのため、たった1回の経験で学習されます。
しかも長い年月続く、堅固な学習効果を持つそうです。

アメリカ西部の農家では、羊を守るためにこれを利用しています。
どういうふうにしているかというと...コヨーテを殺す代わりに、食べると病気を引き起こすような薬剤を混ぜた羊の肉を農場の周辺に置きます。

当然、コヨーテは、それを食べて、具合が悪くなります。すると、この味覚嫌悪嫌悪学習が働き、
コヨーテは羊の肉を避けるようになります。その結果、コヨーテは羊に近づかなくなるそうです。

脳の取扱説明書 P116

3. 好き嫌いの克服法ーかっこいい名前をつけるー

子供たちに喜んで野菜を食べてもらうために何か工夫したりしていますか?

かわいい形にしたり、すりおろして野菜と分らなくしてみたりいろいろと試している人も多いと思います。
もっと簡単な方法で野菜を食べる量が増えるかもしれません。

その方法とは…『野菜にかっこいい名前を付ける』というものです。
いくらなんでもそんなことで…と思うかもしれませんが、ちゃんと実験で証明もされています。

アメリカのコーネル大学のワンシンク教授が行ったものです。
子供たちに2日連続でニンジンを食べてもらいます。
一方のグループは、特に何の工夫もなくニンジンを出します。
もう一方のグループは、ニンジンに「X-ray vision carrots」という何ともよくわからないけれど、アメリカの子供にはかっこよく聞こえるような名前をつけます。

すると、同じニンジンにもかかわらず、ニンジンにかっこいい名前を付けたグループの方は、何も工夫しなかったグループの2倍の量のニンジンを食べたそうです。
使っているニンジンは同じで、単に名前を変えただけですよ。びっくりですよね。

しかも、この実験のすごいところは、それだけではないんです。
なんと、この効果…持続性があるんです。
一度、かっこいい名前のついたニンジンを食べた子供は、実験後も今までよりも50%も多くニンジンを食べたそうです。

もしかして、子供って単純でかわいいよねって思いました
残念ながら…大人も単純でかわいいんです。
あるレストランで「シーフードフィレ」という名前の料理を「ジューシーなイタリアンシーフードフィレ」に変えたところ、売り上げが28%も増え、おいしいという評価も12%アップしたそうです。

脳とこころの豆知識 ― 脳の発達から子供を理解する

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