私たちは、日々いろいろな刺激に接しています。
それを嗅覚、視覚、聴覚、触覚、味覚といった五感を通じて感じとっています。
しかし、あまりにも多くの刺激があるため、そのすべてを顕在意識で認識することはできません。
嗅覚は、五感の中でもっとも原始的な感覚であり、他の感覚とは一線を画しています。香に関する情報は、最初に直接、情動を司る大脳辺縁系に伝えられます。ちなみに、他の感覚器官は視床を経由します。
つまり、情動センターに直結しているという事です。
そのため香りは、直接的に感情に働きかけ、記憶との結びつきがもっとも強いとされています。
学生に風変わりなにおいをかがせながら新しい単語を覚えてもらって、次にその単語を思い出す時にその匂いを漂わせると、成績が20パーセントも向上したという実験結果もあるそうです。
匂いが引き金になって、記憶が思い出されたんですね。
私たちが、匂いを嗅いだ時に、『いい匂いだなぁ』と感じるのか、『あっ!、嫌な匂い』と思うのかということも、そこからどういう記憶を思い出すのかということが大きな役割を果たしています。
同じ焚火の匂いであっても、花火やバーベキューといった楽しい思い出をよみがえらせる人もいれば、夏の終わりの物憂い記憶がよみがえらせる人もいます。
ちなみに、どう感じているかで活性化する脳の部位も違うそうです。
心地よい匂いの時は特に右脳の前頭葉にある嗅覚の領域が、不快な匂いの時には扁桃体と側頭葉の皮質(島)が活発になります。
脳の取扱説明書 P109