プラシーボ効果Harmonista
私たちの感覚は、いろいろなものの影響を受けています。
特に本人じゃないとわからないような『痛み』に関しては、同じような『痛み』であっても多少は強く感じたり、弱く感じたりするようです。
痛みを感じ、つらくて『痛みどめ』の薬を飲んで楽になったという経験をしたことがある方もいると思います。
これは、『痛みどめ』の薬の効果だけで痛みが楽になったわけではないかもしれません。
実は、『痛みどめ』を飲んだから痛みが良くなるはずという『気持ち』だけでも、痛みが軽くなることがあります。
というのも、本物の『痛みどめ』ではなく、偽物の『痛みどめ』(偽薬 ぎやく)でも痛みが軽くなることがあるのです。これを『プラシーボ効果』と言います。
医療関係者の皆さんはよくご存じだと思いますが、『プラシーボ効果』とは、全く効果も副作用もなく、本当の薬に似せて作られた偽薬(読んで字のごとく偽のお薬です)で認められる効果の事です。
そのため、お薬の開発の時などは、この偽薬と比較して、有効性と副作用が調べられたりもします。つまり、薬を飲んだからという『気持ち』によって現れた効果ではなく、薬の本来の効能によって出てきた効果と副作用を調べているわけです。
この『プラシーボ効果』について衝撃的な実験結果がありました。
モルヒネは末梢神経からきた痛みの経路を遮断することで、強力な鎮痛効果を発揮します。そのモルヒネの拮抗薬(効果を打ち消すお薬)にナロキソンがあります。
このモルヒネの偽薬を投与した時の脳の働きを調べたんですね。
すると、この偽薬でもモルヒネと同じように痛みの経路が遮断されたのです。そして、更に驚くべきことに偽薬投与前に本人に内緒でナロキソンを投与したところ、プラシーボ効果は消えたそうです。
本人は拮抗薬が投与されたことなど知らなかったんですよ~。不思議ですよね。
もちろん、この実験結果があるからといっても本物のお薬を使わなくても大丈夫ってことではないです。
というのも、このプラシーボ効果というのは、明らかに存在はするけれど、実際にその効果があらわれる人はそれほど多くはないのです。
特に、実際の身体の病気があって、痛みが強い人には、残念ながら現れにくいようです。
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