赤ちゃんの「人見知り」行動というのは、『相手に近づきたい』という接近行動と、
けれど『怖いから離れたい』という回避行動の両方が混在した葛藤状態だそうです。
これは、東京大学大学院総合文化研究科の岡ノ谷教授らが独立法人科学技術振興機構 Japan Science and Technology Agency (JST)が研究の一環として行った実験により発見されました。
57名もの赤ちゃんに気質調査を行いました。
個人に特有の心理的な特徴は、一般的に「性格」と呼ばれます。この「性格」は、環境からの影響を受け、後天的に作られます。それに対して、「気質」はその性格の基礎にあって、生物学的に規定されている生来持っている特質のことを言います。
1歳前の赤ちゃんでは、その「気質」の影響が強いと考えられています。
そこで、赤ちゃんの「人見知り」の度合いと、相手への「接近」と「怖がり」という2つの気質の関係を調べました。
で、結果はというと、「人見知り」の強い赤ちゃんでは、なんと「接近」と「怖がり」の両方の気質が強かったのです。つまり、「近づきたいけど怖い」という「心の葛藤」を持ちやすい傾向があったということです。
では、人見知りの赤ちゃんというのはどのように母親や他人を見ているのでしょうか?
相手の何に注目しているのでしょう。
赤ちゃんに3種類の顔を見せます。
1)母親 2)他人 3)母親と他人を半分ずつ融合させた顔
すると、母親は親近感から、他人は目新しさからよく顔を見たそうですが、半分お母さんの顔は不気味だからかもしれませんが見なかったそうです。
これは、人見知りの赤ちゃんでも、人見知りでない赤ちゃんでも同じでした。
つまり、ちゃんと顔を見てわかっていたという事です。
では、人見知りかどうかで何が違っていたのでしょうか?
実は、人見知りの赤ちゃんでは、相手の目を長い時間みていたのです。さらには、相手と目が合った時に、凝視するような敏感な目の動きをしていました。相手の目を見るというのは、相手に共感するために重要だとされています。
さらにおもしろいのが、あまり人見知りしない赤ちゃんは正面を向いた顔を長い時間見ていたのに対して、人見知りの赤ちゃんは自分を見ていない顔をよく見ていたそうです。
「相手に近づきたい」そして「相手から離れたい」という相反する気持ちのために、相手の目をじっと見るけれども、相手に見られ続けると目をそらし、相手が目をそらすとまた相手をよく見るという行動をとるようです。
赤ちゃんも見ているものからいろいろなことを感じているんですね。
そして、一生懸命どうしようか考えているのかもしれません。