昔から『三人寄れば文殊の知恵』という諺があるように、長い間一人で悶々と考え込んでいても何も思いつかなかったことが、そのことについて他の人と話をするだけでふといいアイデアが浮かぶということがあります。
なんだか不思議な感じがしますが、これが本当かどうか実験した人がいます。
Colorado大学Boulder校のスミス博士らが行った実験です。
学生350人に対して問題を提示します。当初の正答率は約50%でしたが、小グループで討論しあった後は約70%に上昇したそうです。
これは、このグループのメンバーの誰も答えを知らない状況でさえ、正答率は上がるそうです。
つまり、誰かが答えを知っていて、それが単純に伝わっているというだけではなく、話し合いをすることで誰も知らなかったはずの答えを新たに生み出したということです。
さらにおもしろいことに、話し合って答えを出した場合には、その問題に対する理解も深まることがわかりました。そのためか、その問題に対する応用力がついて、似たような問題の正答率も上がっていたそうです。
とはいえ、ただやみくもに話をすればいいというわけでもないようです。
実は、いいアイデアを出すための話し合いにはコツがあります。
まず、何のために話し合いをしているのかを明確にすること。
目的をはっきりさせることでお互いの意識をその目的へと集中させることができます。
そして、何よりも大事になってくるのが他人の話を聴く時の態度です。
あたりまえのことかもしれませんが、人の話を最後まで聞くというのが重要です。
このとき、批判したり、攻撃したりするのは禁物です。
というのも、どんな発言をしてもいいという安心感があって初めて、自由な発想が生まれるのです。
それでも煮詰まった場合にはストレッチをするなど、身体を動かすのも効果的です。
解決できない問題にぶち当たったときには、一人で悶々と悩まずに信頼できる相手に話をしてみるといいかもしれません。
M. K. Smith et. al. Why Peer Discussion Improves Student Performance on In-Class Concept Questions Science Jan. vol 323, p122-124, 2009