共存共栄~ホンソメワケベラの生態より~

共存共栄~ホンソメワケベラの生態より~Harmonista54

私たちがたった一人で生きていくというのはかなり難しいことです。
ふだん一人で生きていると思っていたとしても、よくよく考えてみれば、多くの人たちが社会を整えてくれているという前提があってこそです。
そのため、自分にも相手にも思いやりをもって協力し合うということが、生きていく上で重要になってくるのでしょう。

それを考えると、よりよい社会を作っていく上で、それぞれの特性を尊重し活かすことは効率の良い方法なのではないでしょうか。

お互いに協力し合って生活を成り立たせているというのは、なにも人間に限ったことではありません。もしかすると、生きているものすべてに本能的にも備わっているものなのかもしれません。

スイスのヌーシャル大学のブシャリ博士らが行った魚を使った実験があります。

ホンソメワケベラという独特の行動をする魚です。この魚はクエやハタなどの巨大な魚についた寄生虫を食べて、掃除をします。夫婦仲が良く、つがいで掃除をすることもよくあるそうです。

このホンソメワケベラですが、実は本当は寄生虫よりも、クエやハタなどが分泌する粘液の方が好きです。ただ、粘液を食べすぎるとクエやハタなどは、そのホンソメワケベラを見捨てて、どこかへ行ってしまうので、粘液以外にも寄生虫も食べているのです。

つまり、クエやハタの状況のことも考えることで、ホンソメワケベラは長く食料にありつけるわけです。

ブシャリ博士が行ったおもしろい実験があります。
このホンソメワケベラが一匹で行動した場合とペアで清掃した場合で好物である粘液を食べる率を比べました。
相手のことを考慮せずに、本能だけで食べているのであれば、寄生虫と粘液を食べる割合は変わらないはずです。
ところが、ペアで清掃している時は粘液を食べる率が半分程度に減ったそうです。いっしょに清掃する相手をも思いやる行動をとるわけです。

しかし、ここで問題になるのが、粘液を食べる率が減るのは、クエやハタがどこかへ行ってしまうのを防ぐために、本能的にペアでいる時に粘液を食べる率を減らしているのかもしれないということです。

そこで、博士たちは、水槽で飼っているホンソメワケベラに、餌として「エビ」と「サメ肉」を同時に与える実験をしました。
すると一匹の時は「エビ」を好んで食べるのですが、二匹で餌を分け合う場合には、エビを食べる率が減ったそうです。

ホンソメワケベラがどう思ってこういう行動をとっているのかはわかりませんが、相手と協調して生活していく性質が備わっているということでしょう。

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