初めて何かをする時、誰しも多少なりとも緊張すると思います。
それが、同じような経験を繰り返していくうちにだんだんと緊張しなくなってきます。
この『慣れ』の現象には、記憶に関係している『海馬』が重要な働きをしています。
例えば、初めて一人でお店に入って食事をしたときにとても緊張していたのが、何回かそのお店に通ううちに緊張しなくなったとします。
この場合、『一人でお店に入って食事をする』という環境は変わっていないにもかかわらず、そのことに対するストレスが減っているわけです。
これが『慣れ』です。
これはどうも、『この状態をストレスに感じる必要はない』と脳が記憶したためにおこってくると言われています。
これを証明する実験を行った人がいます。
心理学者のヘンケです。
先ほども言いましたが、海馬は記憶をするのに欠かせない場所です。そのため、海馬を麻痺させると記憶することができなくなります。
そこで、ラットの海馬を麻痺させ、新しいことが記憶できないようにします。
そうした上でそのラットを新しい環境に連れて行きます。
すると、そのラットは、新しい環境にうまく順応することができませんでした。そのため、いつまでも強いストレスを感じ続けたそうです。
逆に、海馬を刺激して、記憶力を高めてあげると、ストレスが減ったそうです。
事前の練習や模擬試験が緊張を和らげる効果があるのも、この『慣れ』の現象によるものなのでしょうね。
ただ、強いストレスが続くと海馬が小さくなるという事もわかっています。そうなってくると更にストレスを感じやすい状態になるということですよね。悪循環です。
なので、強すぎるストレス環境の時は、そのうち慣れるだろうと無理をしない方がいいかもしれません。
Henke PG. Hippocampal pathway to the amygdala and stress ulcer development. Brain Res Bull Nov;25(5): 691-695, 1990