なぜ悲劇を見るのか

なぜ悲劇を見るのかHarmonista108

皆さんは、どういう映画やドラマがお好きですか?

登場人物に感情移入しすぎて、ヒーローやヒロインになりきってしまう…なんて方もいらっしゃるかもしれません。スカッとするようなアクションものの後に『なりきってるんだろうなぁ』と思う人をみかけることがあります。

アクションものやハッピーエンドで終わるものも楽しいですが、意外と悲しいものというのも人気があるようです。

でも、実際の生活では、悲しい感情をひきおこすような体験はできればしたくないですよね。
なのに、私たちは、なぜわざわざ悲しみを感じるような映画やドラマを見たり、悲しい感情が引き起こされる音楽を聴いたりするのでしょうか?

そのような疑問を持って、行われた実験があります。
理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)情動情報連携研究チームの岡ノ谷一夫チームリーダー、川上愛ジュニアリサーチアソシエイト、東京藝術大学美術学部 古川聖教授らによる共同研究グループが行ったものです。

18歳~46歳の44人(男性 19人、女性 25人)を対象に行いました。
すでにある曲を抜き出して、30秒程度の悲しみを呼び起こすとされる短調の曲に編集したものを聴いてもらいます。

そして、次の質問をします。
「一般的に多くの人は、この音楽を聴いてどう感じると思いますか?」(音楽に対する判断)
「あなたは、この音楽を聴いてどう感じますか?」(音楽から生じる感情)

その質問に対して、「悲しい」「愛おしい」「浮かれた」といった感情を表す62種類の言葉それぞれの強度を答えてもらいます。(というか、感情表現の言葉って62種類もあったんですね…と別のところで感心してしまいました。)

それらの単語が持つ4つの因子で分けます。
1) 悲しみ因子:悲しみ、ゆううつ、沈んだ など
2) 高揚因子:圧倒された、興奮した、刺激的な など
3) ロマンティック因子:うっとりした、愛おしい、恋しい など
4) 浮き立ち因子:浮かれた、快活な、踊りたいような など

すると、悲しいと判断するほどには悲しみを感じてなく、ロマンティックと判断する以上にロマンティックに感じていることがわかりました。

この実験に参加した44人のうち、17人が音楽家、27人が音楽家ではない人達でしたが、結果は音楽経験とは関連性がなかったようです。

どうも、悲劇であったとしても、音楽や悲劇を鑑賞するという自分に直接危害が加わらない状況では、安心して『悲しい音楽』を楽しめるようだと推察しています。

泣くことでストレスが軽減されるという報告もありますので、たまには悲しい音楽や悲劇をみるのもいいかもしれません。

元ネタはこちら
http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130524_1/#note2

脳とこころの豆知識 ― 不合理な行動

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