感情の記憶~なんとなく恐い~

感情の記憶~なんとなく恐い~Harmonista98

高いところが怖かったりとか、犬が怖かったりとか、なにか特別な状況や動物、物に対して怖いと感じる人たちがいます。
そういう人たちの中には、犬に咬まれたとか追いかけまわされたといった明らかな原因がある場合もあれば、いっぽうで、そういった経験をした覚えもないのに起こってくるという場合もあります。

そういう原因が分からないけれど怖いというものの中には、3歳以前のちょっとしたことが原因となっていることがあるかもしれません。
というのも、新しいことを覚えるための場所、つまり経験したことを記憶する場所とそのときに感じた感情を記憶する場所は違っています。

そして、3歳までは何をしたかということを記憶するのは難しいのですが、そのときに感じたことだけは記憶として残っている可能性があるのです。
なので、怖い理由はよくわからないけれど怖いということが起きるわけです。

私たちが新しく物事を記憶するのには、脳の海馬という場所が関係しています。そのため、何らかの原因で海馬が障害されると新しいことは覚えられなくなってしまいます。

厳密なことをいうと海馬が障害されても手続き記憶は保たれます。
ちなみに、手続き記憶とは行動により再生される記憶のことです。たとえば、自転車に乗る、ピアノを上手にひくというのは、この手続き記憶が関係しています。

そして、感情も、海馬が障害されても新しく記憶されます。

それを示す海馬損傷の方に対して行われた心理学的実験があります。
海馬が障害されているので、当然、被験者は5分前のことを記憶していることができません。主治医の名前や顔、会ったことさえも5分もたつと忘れてしまい、覚えていないのです。
そのため、毎日、「はじめまして」と挨拶し、握手をします。

ある日、主治医が手に針を仕込んで握手をしました。当然、被験者は痛がって手をひっこめますが、翌日になれば全その出来事のことを覚えていません。
ところが、主治医に「はじめまして」と挨拶はしたものの、握手だけは怖がってするのを嫌がったそうです。

つまり、握手をした時に手に針が刺さったことは忘れているのにもかかわらず、痛いと感じた嫌な感情の記憶だけが残っていたということです。

これは感情の記憶が海馬ではなく、扁桃体に蓄えられるためといわれています。

小さい時は海馬が充分に発達していないため、3歳以前の事はほとんど覚えていません。しかし、扁桃体はその前に発達するので、その時に感じた感情の記憶だけは残っていると考えられています。

逆に、認知症の方も何があったのかという出来事の記憶は忘れてしまうようになっても、感情の記憶は残っている時期があります。

私たちが不安や恐怖を感じる事には意外な原因があるのかもしれません。

脳の取扱説明書 p131

脳とこころの豆知識 - 記憶と学習

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