背景症状

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医療 ― お役立ちリンク集 ― 高次機能

背景症状

高次機能を評価するためには、脳全体が関わって生じる背景症状として、意識や全般性注意、情動、見当識の状態や精神運動速度遅延や保続の有無を評価する必要がある。

*精神運動速度 Psychomotor speed:思考(情報処理),反応,動作などのスピード
*保続 perseveraton:ある刺激に対して出現した行為の全体または一部が、後続の刺激に対して繰り返し出現すること

◆ 意識状態、全般性注意の状態
覚醒度が明らかに落ちている状態では、高次機能を詳細に検討することはできません。
声かけですぐに開眼するレベルだと失語や半側空間無視の大まかなチェックは可能となります。

軽度の意識障害、覚醒はしているが意識清明とは言えない場合は、評価が困難になります。
例)confusion (意識不鮮明)、benumbness (昏蒙)。
患者は開眼しており応答もしますが、全般性注意が低下し、反応速度も遅いことが多くなります。
全般性注意の障害があると、一つのことに注意を持続できず、注意が転導しやすくなるため、話や行為の一貫性が失われます。
また、注意を向ける範囲が狭く、自分の状態や周囲の状態に無関心で、状況を十分に把握できません。したがって、軽度の意識障害があると、複雑な話ができなくなったり、記銘しにくくなったり、書字や計算に誤りが出現するなど、さまざまな検査の成績に影響します。
特に、右中大脳動脈領域の広範囲な梗塞では、confusionが長引くことがあり、検査結果の判断には注意を要します。

全般性注意に関する検査:順唱、タッピングスパン(視覚性スパン)がよく用いられる
順唱・タッピングスパンともに障害あり:全般性注意障害
順唱のみの低下は失語症などで、タッピングスパンのみの低下は視空間認知障害でも観察されるので、注意を要する。
順唱:健常人では5桁以上。高齢者ではやや低めになる
タッピングスパン:順唱より1~2個少ない
*タッピングスパン:検査図版を使って視覚的な記憶範囲を求める検査

◆ 情動の状態
情動の病的変化は、それ自体が高次機能障害の症状として出現します。
それと同時に、情動の状態が他の高次機能検査成績にも影響します。
いっぽう、高次機能障害を自覚して、反応性にうつ状態になるなど情動の変化をきたすこともあります。

・多幸状態 (euphoria):空虚な気分の昂揚があり、自己や周囲の状態についての洞察が低下した状態です。前頭葉または右大脳半球の広範な機能障害で出現します。
・情動失禁 (emotional incontinence):外界からのちょっとした刺激で情動が変化して、抑制できない状態です。偽性球麻痺でみられます。
・発動性低下:自発的な行動が少なくなるため、日常生活で問題になります。しかし、刺激や問いかけがあれば反応できることが多く、診察や検査は可能です。
・うつ状態:認知機能検査が軽度低下する場合があることが知られています。

◆ 見当識
時間的、空間的に自己を定位する能力のことを言います。通常は、年月日や今いる場所の名前を答えさせます。
全般性注意障害がある場合には、程度の差はあれ失見当識(見当識障害)が必発します。
健忘の結果として、日付や場所を覚えることができず、失見当識を呈することも多いです。
言語による質問のため、失語症の場合も成績低下がみられます。

◆ 精神運動速度遅延
明らかな運動障害がないにもかかわらず、多くの課題で反応に時間がかかる場合を精神運動速度遅延と言います。遂行時間を測定する課題や制限時間のある課題の成績は当然低下します。
十分に時間をかければ正答が得られることも多く、通常の速さで質問を続けると能力を低く見積もってしまうことになるので、注意が必要です。
皮質下認知症では、精神運動速度遅延が目立ちます。

◆ 保続
運動性保続と感覚性保続が知られていますが、運動性保続が多く見られます。
運動性保続は、一度自分の行った行為がその後も繰り返される現象です。
意図性保続と間代性保続に分けられます。

・意図性保続:何かを意図的に始めようとすると、少し前に行った行為が繰り返される現象
例)一度書いた単語がその後、別な単語を書こうと思った時に出てきてしまう
・間代性保続:一つの運動が繰り返される現象
例)同じような線を何本もひき続ける

運動性保続は、発話、書字、描画、行為などさまざまな場面で出現します。
保続が強いと、一つ目の課題はうまくできても、それ以降の課題で保続による誤りが続くことがあります。したがって、誤りが保続の影響でないかどうか気をつけてみておく必要があります。
複数の種類の行為にまたがる保続は、前頭葉機能障害であることが多いのですが、失語においては言語面にだけ保続が見られるというように、機能障害のある行為にだけ保続が見られる場合もあります。

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