カテゴリー別アーカイブ: 認識できるのは潜在意識のごく一部

迷っていると思っても決まっている

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私たちは、ふだんどの洋服を着るのか、夕食を何にするのかといったことからもっと大きなことまでいろいろなことを選択して生活しています。
すぐに決められることもあれば、迷ってしまってなかなか決められないということもあると思います。

にわかには信じがたいのですが、自分では「迷っている」と思っている時に実は脳はすでに決断を下しているそうです。
カナダのウエスタンオンタリオ大学の心理学者バートラム・ゴーロンスキーらによって行われた実験です。

アメリカ軍の基地があるイタリアの小都市ヴィチェンツァに住む人に対して行われた実験です。
事前に、「イタリア政府がアメリカに基地の拡張を許すべきかどうか」について意見を求めます。その上で目の前のモニターに単語や映像が映し出されます。
そこで、「ポジティブ」な単語(「喜び」「幸運」など)が出た時には左側のボタン、「ネガティブ」な単語(「苦痛」「危険」など)が出た時には右側のボタン、アメリカ軍基地の画像が出た時に決められたボタン(半数はネガティブな単語のときに押す左側のボタン、残りの半数はポジティブな単語のときに押す右側のボタン)をできるだけ早く押してもらいます。

そして、アメリカ軍基地の画像を提示した時からボタンを押すまでの反応時間を調べました。
当然、アメリカ軍基地に対してポジティブなイメージを持っている人が「ネガティブ」を意味する右側のボタンを押さなければならないときに反応速度が遅くなり、ネガティブなイメージを持っている人が「ポジティブ」を意味する左側のボタンを押さなければならないときに反応速度が遅くなります。

このテストでは、最初の時点でアメリカ軍基地の拡張に対して賛成か反対かの意見が決まっていなかったものの、1週間後その意見が決まっていた人たちがいました。
ところが、驚くことにこのテストでの反応が後のその人たちの意見と高確率に一致していたのです。

つまり、本人が迷っていると思っている時に受けたテストでアメリカ軍に対してポジティブなイメージを持っていると推測された人たちは、1週間後にアメリカに基地の拡張を許すべきだという結論を出し、ネガティブなイメージを持っていると推測された人たちは基地の拡張を許すべきではないという結論を出す確率が非常に高かったということです。

本人としてはどうしようかと迷っているときにすでに潜在意識では結論を下していたのです。

脳の取扱説明書 p177

元ネタはこちら
Automatic Mental Associations Predict Future Choices of Undecided Decision-Makers
http://synapse.princeton.edu/~sam/galdi_gawronski2008_science.pdf

脳とこころの豆知識 - 認識できるのは潜在意識のごく一部

人はお金に対してネガティブなイメージを持っている

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先日、隣の席の男性2人が人生について熱くかかり、反対隣の女性が1人でビールのジョッキをおかわりしているという不思議な状況で1人食事をしました。
加えて、新人のウェイターさんがテンパりながらサーブしてくれるというなんとも味わい深い環境でした。

熱弁をふるわれていたので、意識せずとも会話が聞こえてきてしまうわけですが、最初は1人が「お金が嫌いなんだ」ということを相談されてました。

お金のことをいらないって思う人はほとんどいないと思いますが、この男性のようにはっきりと自覚しないまでも意外と潜在的にはお金に対してネガティブなイメージを持っていてお金が嫌いという人は多いようです。

つまり、自分の意識としてはお金が欲しいと思っていても、潜在意識では、「お金=汚いもの、悪いことをしないと手に入らないもの」といったような悪いイメージを持っている可能性があるのです。
そして、そのため無意識でお金持ちになることを拒否してしまい、お金が稼げない、お金が貯まらないという現実を引き寄せるということがよくお金に関する本にも書かれています。

では、実際、お金を見た時、多くの人はどう反応するのでしょうか?

ベルギーのリエージュ大学の研究チームが行った実験です
リエージュ大学の成人職員351人(用務員から上級管理担当者まで)を集めて、オンライン調査を実施しました。

被験者をランダムに2つのグループに分け、いろいろと質問して彼らの「楽しむ能力」を測ります。そして、この質問の前に片方のグループには山のように積んだユーロ紙幣の画像を見せました。

テストでは、重要な課題をこなす(充足感)、遠出してロマンティックな週末を過ごす(喜び)、ハイキング中に見事な滝を発見する(畏敬の念)という、いずれかの経験を想像するように言われます。

いずれのシナリオも、それに対する反応として8通りの選択肢があります。
そのうち4つは、経験を楽しむ反応(肯定的な感情を表す、その瞬間の気分を楽しむ、その出来事を楽しみに待つ/追想する、その経験について他人に話す)です。

被験者は、そのような状況下で自分が通常とるはずの行動を最もよく表している反応を、1つまたはそれ以上選ぶよういわれます。経験を楽しむ選択肢を1つ選ぶごとにポイントを1つ獲得します。

すると、事前に大量のユーロ紙幣を見せられた被験者たちは、経験を楽しむ能力のスコアが優位に低かったそうです。つまり、人間はただお金の画像を見ただけなのに、人生の小さな喜びを楽しむことへの興味が薄れる可能性がある…というのです。

さらには、現実に多くのお金を稼いでいる被験者ほど(被験者は全員、収入を尋ねられています)、楽しむ能力のスコアが有意に低かったそうです。

人生の充足度に関する要素を多岐選択肢のテストで有意に測定できるかは現時点では明確ではないため結果の解釈には注意が必要だそうですが、カナダの学生を対象に行った同じような実験でもおもしろい結果が得られています。

こちらは事前にカナダ・ドル紙幣の画像を見せられた学生の方が、出されたチョコレートを味わって食べる時間が短かったそうです。

不思議ですよね…お金の画像を見ただけですよ。
日常の楽しみを味わう心の余裕がなくなるって、お金に対してどんなイメージ持ってんだよって聞きたくなります。

錯視

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錯視とは、物理的現実と知覚が違うという現象のことで、私たちの日常でも気にしていないだけでよく経験します。
地平線からのぼる満月の月を思い出してください。
地平線からのぼるとき、その月は巨大に見えます。しかし、その数時間後…頭上高くにのぼった時、それはどう見えるでしょう。地平線にあった時と比べるととても小さく見えます。

もちろん実際に月の大きさが変わるわけはないですよね。それに地球から月までの距離も地平線にあった時と頭上でそんなに変わるはずはありません。それなのに、なぜ地平線近くではあんなに巨大に見えたものが、頭上に言った途端に小さく見えるのかふしぎですよね。

この現象に錯視が関係しているのです。地平線から見える月が大きく見えるのは、地平線上の樹々や丘陵、その他のものが隣にあったからだと考えられています。

そして、今回のドレスと同じように隣に何があるかでそのもの自体の色も違って見えます。
有名な錯視に灰色の紙切れが白に囲まれていると濃く見え、黒に囲まれると淡く見えるというものがあります。

そして、実は、この錯覚がないと私たちの生活はとても不便で味気ないものになってしまいます。
というのも、左右の目を画素数に例えると約100万画素…安物のデジタルカメラほどしかないそうです。それを錯覚によって補って豊かな世界にしてくれているのです。

そして、私たちが平面に描かれた芸術的な絵を楽しめるのも、こういった錯視の効果があってこそというわけです。

脳が騙されてる世界を味わってみたいと思います。

錯視を体感したい方はこちらもどうぞ…
http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/
http://www.huffingtonpost.jp/2013/08/21/10_optical_illusions_that_will_blow_your_mind_n_3766354.html
http://matome.naver.jp/odai/2131540502304098601
スリットを動かすと動き出す

脳とこころの豆知識 - 認識できるのは潜在意識のごく一部

直感

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私たちは、何か事が起こる前に「虫の知らせ」を受け取ることがあります。
「虫の知らせ」の「虫」は、古く、人間の身体に棲み、意識や感情に様々な影響を与えると考えられていたもので、潜在意識や感情の動きを表すそうです。

理由はわからないんだけど、なんとなく、そうなることだけがわかる、そんな経験をしたことがある人もいると思います。

このような「虫の知らせ」いわゆる「直感」は、基底核が関係していると言われています。
London大学のWellcome Trust Centre for NeuroimagingのMathias Pessiglioneが行った実験です。

Gumtree websiteで募集した18歳~39歳の20人(男性11人、女性9人)を対象に行いました。
左利きの人、服薬中の人、精神疾患のある人、MRIを受けることができない人は除外しています。
被験者にサブリミナル映像で図形1と図形2を見せます。
図形1が出た時にレバーを引くと1ポンド得をして、レバーを引かないと1ポンド損をします。
図形2が出た時にレバーを引くと1ポンド損をして、レバーを引かないと1ポンド得をします。

なかなか難しいですよ。
なにせ出てくる画像がサブリミナルですから、顕在的には見えていないもので行うわけです。本人としては、わけもわからずに、直感だけでレバーを引くのか引かないのかを決めるわけです。

最初は正しくレバーを引く確率は当然50%です。ところが、20回もすると見えない図形をかなり正確に判別しているようなのです。不思議ですよね~。
もちろん、被験者に特殊な能力があったというわけではないですよ

そして、その時に頑張っているのが基底核…というわけです。

元ネタはこちら
Subliminal Instrumental Conditioning Demonstrated in the Human Brain
Neuron 59, 561–567, August 28, 2008
http://www.cell.com/neuron/pdf/S0896-6273(08)00575-8.pdf

脳とこころの豆知識 - 認識できるのは潜在意識のごく一部

ヒーローの格好でヒーロー気分?!

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研究者というのは、本当にいろんなことに興味があるようです。
そのあくなき探究心には、頭が下がる思いがします。

ファッションと心理に関した実験です。
とはいっても、その時に使用した服が『スーパーマンのSのロゴが入ったTシャツ』です。
ヒーローの格好をすることが学生の心理にどういう影響を与えるのかを調べたかったようです。
よく考えつきますよね。

イギリスのHertfordshire大学のKaren Pine教授が学生たちを対象に行っています。
発表されていることから想像がつくと思いますが、ヒーローの恰好をする効果はあったようです。
ロゴの入ったTシャツを着た学生たちは、そうでない学生のグループと比べて、「自分は肉体的に強い」「自分は人々から好まれている」「他の学生よりも優れている」と感じるようになったそうです。

しかも、学生たちに「どれくらいの重さを持ち上げられると思いますか?」と質問したところ、ロゴの入ったシャツを着た学生たちは、そうでない学生たちよりも、より重い重量を答えたのです。

ノースカロライナ大学で心理学を研究するBarbara Fredrickson教授は、もっと変わった実験をしています
女性の被験者たちに数学の問題を解いてもらったのです。ただし、その時の服装が問題です。
水着を着た場合とセーターを着た場合で比較したのです。
それにしても、なぜ水着???
そしてその結果は、予想された方も多いと思いますが、水着を着ていた時の方が成績が悪かったのです。

ちなみに、男性だと水着でもセーターでも成績に差はでないそうですよ。
ただ、その結果に対する分析が笑えます。
女性は水着を着ていると自分の身体に対する他人の評価が気になり、数学の問題に集中できなくなったせいではないかという誰もが納得してしまうものでした。

結果も分析も想像できる人が多い中、それをまじめに実験して証明しようとするところがある意味すごいです。

着る服で人間の精神状態とその能力は大きく変化する「スーパーマンのSのロゴ:自分は肉体的に強いと感じた」

What your clothes are telling you
https://www.psychologytoday.com/blog/do-something-different/201405/what-your-clothes-are-telling-you?tr=HomeEssentials

脳とこころの豆知識 ― 認識できるのは潜在意識のごく一部

香りの効用

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私たちの感情は、いろいろなものの影響を受けています。
その中でも大きな役割を果たしているのが、香りです。
香りは、直接的に感情に働きかけるとされています。そのため、私たちは全く気づいていないうちに、周りの環境から出されるにおいによって影響を受けているかもしれません。
香の効果についてまとめてみました。

【目次】
1. 香りが売り上げを左右する

2. 香りが行動を左右する


1. 香りが売り上げを左右する

こういった香の性質をうまく活用したのが、ラスベガスのミラージュホテルです。このホテルは香りにより成功したともいわれています。

ある独特の香りがホテルのカジノ内の換気装置から意図的にまかれているそうなのです。
一時、「ココナッツバターにはギャンブルをさせる力がある」という噂がまことしやかに流れ、カジノを持つホテルがこぞって導入したがったそうです。
ちなみにこの香りを導入した人はこのことを強く否定しています。毎日嗅いでいるけど、決してギャンブルはしたくならない…という理由からですが。

では、なぜ彼はこの香りをホテルに導入したのでしょうか。それは、視覚に訴える室内演出と同じ目的だったようです。
居心地良く、寛げる雰囲気にすることで、お客さんにその場所から離れがたいと感じてもら王と思ったそうです。そのためには、使用する香りはその場に調和したものでないと意味をなしません。

その空間がどのように利用されるのか、どういう客層をイメージして設計されたものか、ということを考える必要があります。その上で、その空間がさらに居心地の良いものになるような香りを選ぶことが大切になってくるのです。

マーケティングの調査によると、人々は感じのいい香りがしているお店を高く評価し、何かを買おうという気になりやすいそうです。
カジノの中でもいい香りがする一角にあるスロットマシーンは利用率が高まる傾向があるといわれています。

2. 香りが行動を左右する

それだけでなく、香は具体的な考えや行動にいたるまで、いろいろなことに影響を与えるとされています。ラドバウド大学のホランド博士らが、50人の学生にコンピューター上の単語を探すテストをしてもらった実験です。
自分が顕在的に感じとれるレベル以下、つまり全く気が付かないくらいの洗剤の香りを嗅いだ場合には、「清潔」「片づけ」などの単語をすばやく見つけられるようになりました。しかも、その日の予定を聞いたときには、「部屋を片付ける:だったり「車を洗う」といったことを答える確率が高かったのです。

おもしろいことに、ぼろぼろと崩れやすいクラッカーを食べるときに、自分の口元からクラッカーのかけらを拭き取るといった行動が3倍多くなっていたそうです。

脳の取扱説明書 p111

脳とこころの豆知識 ― その他 ― 香りの効果

変化に気がつかない~変化盲~

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残念ながら私たちは、自分の日々のわずかな変化に気づくことはほとんどありません。
久しぶりに会った人たちから指摘されて初めて、自分の変化に気づくということもよくある話です。
これは変化盲と呼ばれる現象です。

人が、いかに変化しているものに気づかないのかということを示す衝撃の実験があります。1998年にShimonsとLevinが行ったものです。
実験者が通りすがりの人に道を尋ねます。
実験者と被験者が話をしていると、ドアを運んでいる作業員たちが二人の中を割って入り、通り過ぎます。このときに会話をしていた実験者がドアの裏に隠れて、別の人と入れ替わります
全く別の人物に変わったにもかかわらず、気づいたのは15人中たったの7人だったそうです。

体型が変わったり、人種が変わったり、ときには性別までかわっているにもかかわらず、半数の人は気づきもしなかったのです。

これに関しては、さらに驚くような実験があります。
実験者が男性に2枚の女性の写真を見せます。
そして、魅力的だなと思うほうを選んでもらい、その写真を被験者に渡します。
ところが、この実験者は実はマジシャンで、渡すときに本当は選んでいない女性の写真をを渡します。
そして、「どうしてこちらの女性を選んだんですか?」と聞きます。
すると、「微笑みがいいから」とか「イヤリングが気に入ったよ」とか答えるそうです。
本当は選んでもいないのに。

これくらい変化に気づかないようにできているのです。そして、いったん自分が選んだ(と思い込んでいる)ものに関しては、特に疑わずに、その選んだ理由を探し出してしまいます。
だからこそ、柔軟に変化に対応して、適応していけるのかもしれません。

しかし、自分の目標や状態を意識していないと、自分でも気づかないうちに周りに流されて変わっていってしまったり、自分の小さな成果に気づかずがっかりしたりすることになってしまうということになりかねません。

ときどき自分の状態を客観的にみるように意識してみるのが良いのかもしれません。

脳の取扱説明書 p253

『錯覚の科学』 クリストファー=チャプリス ダニエル=シモンズ著、成毛真 解説、木村博江 訳 文芸春秋 2014
Johansson P. Failure to detect mismatches between intention and outcome in a simple decision task. Science 310(5745) Oct 7 116-119, 2005

変化盲の動画はこちら
http://www.nicozon.net/watch/sm15409333

脳とこころの豆知識 - 認識できるのは潜在意識のごく一部

興味があることだけ聞いている~カクテルパーティー効果~

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私たち脳は、聞こえてくる音すべてを認識できるようにはできてはいません。
自分が興味のある話、つまり、注意を向けている話だけを聞いているといわれています。

この現象には、「カクテルパーティー効果」という名前がついています。
これがあるからこそ、人混みの中で自分の名前を呼ばれたときに気づくことができます。

この現象がなければ、周囲の雑音に紛れてしまい、同じような音の大きさで呼ばれている自分の名前を聞きとることは難しいでしょう。

これは、1953年に心理学者のCherry博士が提案した概念です。
私たちは、聞こえてくる全ての情報を同じように扱って処理しているわけではありません。最初にフィルターをかけてしまうのです。

それによって、自分に関係のある情報に注意を向け、その他の情報はどこか別のところにおいてしまうという選別をしています。

そのため、騒々しい中に身を置いているときにはちゃんと聞こえていたはずの友人たちとの会話や音であっても、それを録音して聞こうとすると雑音ばかりで聞き取れなくなってしまうのです。

実際に喧騒の中にいるときにはいろいろな方向から音が入ってきます。ただ、私たちは、興味があるもの、つまりその音が入ってくる先にだけ注意を向けるということを無意識のうちにしています。そのため、聞きたい音だけを選んで聞き取れるのだそうです。
この選別作業には、言語野を持つ左脳が関わっていて、雑音をシャットアウトする働きをしているのではないかと考えられています。

この現象を逆の側面から考えると、自分には関係がないと思っていることというのは、近くでその話をされていても気づかないかもしれないということにもなります。

要するに私たちは、注意を払っていること、つまり自分に関心のあることしか聞いていないのです。

脳の取扱説明書 P62

元ネタはこちら
Some experiments on the recognition of Speech, with One and Two Ears

脳とこころの豆知識 - 認識できるのは潜在意識のごく一部

自分であると認識するのは意外と難しい?!

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先週、3日連続で以前からの変化を指摘されました。
しかも、まったく違う場面で…。
意外と自分では気づかないんですよね。これが…。

それとは少し話がそれますが、私たちが自分を見て自分と認識できるためには、複雑な脳の機能が関係していると考えられています。
私たち人間は鏡を見て、自分であるとわかります。

動物の中で、鏡を見て自分であるとわかることが確認されているのは、チンパンジー、オラウータン、イルカ、ゾウなどごく一部であるとされています。
これらの動物の共通点というのが、脳が体重に比べて大きいことです。

そのため、自分の顔を見て自分とわかるためには、高度に発達した脳の機能が必要であると考えられています。

人間でいっても、自分の顔を見て自分とわかるのは2歳くらいからとされています。
逆に、アルツハイマー病の方の中には、鏡に映る自分を見て自分と認識できなくなる人もいます。
鏡に映る自分を見て、「私の友達」と呼び、自分と似ていることは認めるものの、自分であることは決して認めません。

しかし、驚くべきことに、そういう方であっても顔を洗ったり身づくろいをしたりする時に、問題なく鏡を使う事はできるのです。

ここが悩ましいところです。
この方は本当に鏡に映った自分を自分とわかっていないのでしょうか?
それとも本当はわかっているのでしょうか?

こういう事例から、自分を自分として認識する過程が1つの単純な経路で行われているのではなく、複数の経路が関与しているのではないか…ということがわかってきたのです。

鏡に映った自分を見て、自分とわかるっていうことにもこれだけ脳が使われているわけです。
自分で自分自身のことを理解するのが難しいわけです。

脳とこころの豆知識 ― 認識できるのは潜在意識のごく一部

見えていないけどわかっている~盲視~

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ふだん私たちが見ている世界...もっと正確に言うと見えていると思っている世界というのは、私たちが潜在的に認識している世界のごく一部なのかもしれません。

そう思わざるを得ない現象に『盲視』というものがあります。
と言われても、よほどのマニアックな方でもない限り、聞いたことがないですよね。
不思議な症状『盲視』についてまとめてみました。

【目次】
1.  盲視とは
2. なぜ盲視が起きるのか


1.盲視とは

『盲視』は、『見えていると意識できないのに見えている』現象と定義されています。つまり、脳の障害のために、本人の自覚としては「見えない」状態なのに、テストをすると物体の動きや位置をかなり正確に把握できることを言います。
これは、1973年に脳の視覚野に障害がある D. B.が、その見えないはずの視野にあるモノの位置を当てることに医師が気付いたことから発見されました。もちろん、これは、本人が「見えない」と嘘をついているわけではないですよ。
ちょっと、想像がつきにくいですよね。
実例があった方がわかりやすいと思いますので、「カールソン 神経科学テキスト 脳と行動」に載っていた盲視の方の例を挙げたいと思います(一部省略してます)。

M博士は脳梗塞で視力をほぼ完全に失ったJ氏の検査を行いました。
J氏の見える範囲は視野の中心部のほんのわずかな点状の領域だけでした。
M博士は目の前に座ったJ氏の前に杖を出して「Jさん、まっすぐ前を向いてください。頭を動かしたり目を動かしたりせずに右手を伸ばして、私が持っているものを指さしてください」と告げました。

J氏は初め「私は何も見えません」と怒りました。しかし、最終的に指をさしてみました。すると、J氏の指が杖の端に触ったのです。J氏は、自分は何も見えていないのに、自分で正確に指をさせたことにとても驚きました。

「Jさん、あと何回かやってみましょう」というとM博士は杖の向きを変えて、杖の取手の部分をJ氏に向け「じゃあ、杖の取手を握ってみてください」と言いました。
J氏は手を開いて伸ばし、取手の部分を難なくつかみましだ。M博士は杖を90度回して再び取手を握るよう促しました。J氏は手を持ち上げるにつれ手首を回し、取手の向きにうまく合わせ再び難なく取手をつかみました。

2. なぜ盲視が起きるのか

これは決してJ氏が仮病を使っているわけではありません。
これは、視覚に関わる脳内機構が複数あることから生じるとされています。

私たちは、その中の1つである単純な視覚系によって受け取った情報には顕在的には気づかないそうです。
というのも、単純な視覚系は意識が発達する前に進化したため、意識と関連した領域と連絡を持っていないとされています。

つまり、私たちは視覚情報だけでも自分が認識しているよりはるかに多くの情報を受け取っているということです。実際私たちが見ている世界だけが全てではないということです。

通常、眼の「網膜」で見た情報は、「視床」を経由して、「視覚野」に送られ、ここで初めて「見ている」として意識されます。
ところが、伊佐教授ら研究チームのこれまでの研究成果から、脳梗塞などでこの「視覚野」が障害を受けた場合には、眼の「網膜」からの情報が中脳の「上丘」に入り、そこを介して脳の中に情報が伝わっていくことが分かってきました。
そして、情報がこの経路を使っている場合は、私たちに「見えている」という実感がないのです。

サルを使った実験があります。
視覚野の障害による視覚障害のサルに、日常生活シーンの映像を見せ、そのときの目の動きを測定しました。
日常生活シーンの映像から、「動き」「明るさ」「色(赤―緑)」「色(青―黄)」「傾き」に関わる視覚情報の特徴を分析し、その映像を見ているときの視覚障害サルの目の動きと比較しました。

すると、盲視のサルでも、「動き」[明るさ]「色(赤―緑)」の画像特徴を認識して、そこに目を向けることが分かったのです。
ところが、「傾き」については、盲視のサルでは注視できないことがわかりました。

元ネタはこちら
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2012/06/post-217.html

脳とこころの豆知識 - 認識できるのは潜在意識のごく一部