「過去にとらわれること」と「過去をふり返る」こと

「過去にとらわれること」と「過去をふり返る」ことHarmonista

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私たちが未来に向かって進もうと思ったとき、『過去にとらわれる』のは良くありませんが、『過去を振り返る』ことによって生じる思慕の感情『ノスタルジア』には意外な効果があるようです。
似ているようで全く違う「過去にとらわれること」と「過去を振り返ること」についてまとめてみました。

【目次】
1. なぜ過去にとらわれるのか
2. 過去を振り返ることで起きる効果


1. なぜ過去にとらわれるのか

私たちには、過去にこだわってなかなか自分を変えられないということがあります。
この過去にこだわってしまうという性質には、脳の眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつという場所が関わっていると考えられています。ちょうど私たちの目玉が収まっている眼窩と呼ばれる骨のです。

オックスフォード大学のRolls博士らが行った逆転学習という実験があります。
被験者にAとBの写真を見せます。
Aの写真を見せた時にボタンを押すと報酬がもらえます。逆に、Bの写真を見せた時にボタンを押すと罰が与えられます。これを学習させた後に、このルールを逆転させます

普通の人は、ルールが逆転したことにすぐに気づき、新しいルールにのっとってボタンを押します。
しかし、眼窩前頭皮質に障害があると、これができません

これは、ルールが逆転したのに気づかないからというわけではないそうです。
ルールの変更に気づいているにも関わらず、前のルールにのっとってボタンを押してしまうのです。
実際、この部分が障害は、IQや言語記憶とは関係がなかったそうです。

不思議ですよね。
自分に不利になるのがわかっているにもかかわらず、いったん学習したルールを変えられないなんて。

ここまで極端ではないにしても、過去の成功体験や失敗体験にこだわって、状況の変化に対応できないということを経験したことがある人もいるのではないでしょうか。
できれば、状況に応じて、柔軟になりたいものです。

この眼窩前頭皮質を鍛える方法として、推奨されているものがいくつかあります。
・人と顔を合わせてコミュニケーションをとること
・運動をする
・座禅
だそうです。

脳の取扱説明書 p208

E T rolls et. al. Emotion-related learning in patients with social and emotional changes associated with frontal lobe damage. Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry 1994;57:1518-1524 doi:10.1136/jnnp.57.12.1518
http://jnnp.bmj.com/content/57/12/1518.short

2. 過去を振り返ることで起きる効果

イギリスのSouthampton大学のSedikides博士が行った研究によると過去をふり返ることには以下の4つの効果があるそうです。
1) 孤独を慰め、心配や退屈を和らげる
2) 周囲の人への感謝の念を思い出させてくれる
3) 心も体温も少し暖かくなる
4) 人生に対して楽観的で肯定的な気持ちを高める

純粋に過去を振り返るということは、自分自身が送ってきた時間を大切にし、過去の自分を客観的に認めてあげることです。そのことは、今ある自分自身を大切にすることにつながります。
そうすることで、周囲に感謝し、そして心を広く前向きな気持ちで進んでいくことができるそうなのです。

ノスタルジアには、過去の自分と現在の自分が同じであると感じられる自己連続性を回復させる働きがあると言われています。この自己連続性は、アイデンティティを構築する上で重要となってきます。
また、過去の自分と現在の自分が同じであると思えなくなるとネガティブな感情が高まってくるとも言われています。

実際、被験者に『それぞれの人生が無力で不毛なものだ』ということを書いたエッセイを読んでもらったところ、過去を振り返ってからエッセイを読んだ被験者の方が悲観的になる度合いは低かったのです。

では、どのように自分をふり返ったらよいのでしょうか?
最も簡単な方法が音楽です。当時聞いていた音楽は、簡単に私たちをその当時に引き戻してくれます。
そして、自分の在り方を見つめるという点においては、以下のものが効果的と言われています。

1. 本を読む
2. 瞑想する
3. 書き出してみる

What Is Nostalgia Good For? Quite a Bit, Research Shows

ノスタルジアが自己連続性に与える影響
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/27279/3/shakaikg0070300010.pdf

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