運動の効能~脳に与える影響~

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身体を動かすことは、私たちに想像以上の効果をもたらしてくれます。
実際、どのような効果がるのでしょうか。

【目次】
1. 運動は脳の神経細胞を増やす
1.1 グリア細胞との関係
1.2 BDNFとの関係
2. 運動で認知機能アップ
2.1 有酸素運動との関係
2.2 成績と心肺機能の関係

3. 運動は落ち着きとリラックスをもたらす


 1. 運動は脳の神経細胞を増やす

脳の神経細胞を増やすもっとも効果的な方法は運動であるといわれています。
私たちの脳は、実は大人になってからでも神経細胞が増えるということがわかっています。
この新しくできた神経細胞というのが、私たちの記憶力や思考力を高めるのに重要な働きをしているのです。
神経細胞は電気信号によってお互いに情報のやり取りをしています。そして、新しくできた神経細胞のほうが興奮しやすい、つまり、電気信号を流しやすいのです。そのため、情報のやり取りがスムーズにでき、記憶力や思考力を高めるのに最適であるというわけです。
要するに運動は神経細胞の数が増える可能性があるというだけでなく、情報のやり取りがスムーズな新しい神経細胞があるという意味においても、勉強したり、ものごとに集中したりするのに効果的なのです。

 1.1 グリア細胞との関係

運動が神経細胞を増やすということに一役買っているのグリア細胞です。
脳の中には、神経細胞とグリア細胞、そしてそのもとになる神経幹細胞があります。以前は、神経細胞が緻密な脳のネットワークを作って、脳の中心的な役割を果たし、グリア細胞はこれらを補佐する脇役と考えられていました。ところが、最近になってこのグリア細胞の働きが見直されてきました。

グリア細胞は、神経細胞に栄養を運んだり、脳の中をチェックしていらなくなったものを処理したり、神経細胞どうしの連絡を助けたりと重要な働きを担っていることが分かってきたのです。

最近、グリア細胞の1つであるアストロサイトが神経細胞を増やすメカニズムが証明されました。マウスで行われた実験です。
老齢マウスにストレスを感じさせない程度の運動(ランニング)を短期間行わせます。
すると、海馬で新しく生み出される神経細胞の数が増加します。この神経細胞の数を増やすのにアストロサイトが重要な役割を果たしていることがわかりました。もう少し正確に言うと、運動によってアストロサイトがより多くのWnt3を産生し、この物質によって神経細胞を作るのに必要な遺伝子が活性化されたそうです。
そして、このグリア細胞は、嬉しいことに神経細胞と違って、40~50歳まで増え続けるようです。

脳の取扱説明書 p142

下記も参考に
産総研、老化した脳でも外的刺激で神経細胞の産出機能が増加することを確認
脳の中のグリア細胞の働きで、運動学習が加速することを発見 ―神経細胞とは異なるグリア細胞の活動を光で自在に操る技術を確立―

 1.2 BDNFとの関係

運動によって神経細胞の成長を促す物質である脳由来神経栄養因子BDNF (Brain-Derived Neurotropic Factor)が増えるということもわかっています。

BDNFは、神経細胞の生存を維持し、神経細胞が突起を伸ばしネットワークを形成し、神経を修復し、保護するのを助ける働きがあります。
しかも、それだけではなく、記憶などに重要な神経結合や思考や感情に関わる神経伝達物質が増えるとされています

そのため、BDNFを発現しないようにしたBDNFノックアウトマウスでは記憶をする際に重要な働きをする海馬長期増強 (LTP)の発現が減り、空間学習の低下が認められます
最近になって、BDNFとアルツハイマー病やうつ病の関連にも注目が集まっています。
アルツハイマー病の患者さんの脳では、特に大脳皮質や海馬においてBDNFの量が低いことがわかっています。
また、うつ病の患者さんの脳でも海馬を含むいくつかの領域でBDNF蛋白量の減少が認められます。うつ病の発症にはセロトニンの関与が考えられていますが、BDNFのセロトニン作動性ニューロンの生存維持にも作用しています。
BDNFですが、運動によって増えるだけでなく、ストレスによって減ることがわかっています。

2. 運動で認知機能アップ
2.1 有酸素運動との関係

では、実際に運動することで脳の機能は改善するのでしょうか?
2003年ColombeとKramerは、有酸素運動によって認知機能の改善に効果があったと報告しております。特に、有酸素運動に伴う体力の増加が、計画性、スケジュール作成、ワーキングメモリー、重複作業に効果的だったそうです。

有酸素運動の効果は、有酸素運動に加え、筋力や柔軟運動を同時に実施した方が効果が高いとされていますが、その効果は特に女性で目立つそうです。これは、女性ホルモンの影響によるものではないかと考えられています。というのも、運動の効果は女性ホルモンであるエストロゲンと関係していたのです。
ちなみに、実験で行われた運動は、歩行や筋力トレーニング、レジスタンス運動を含む低強度の運動が中心で、期間は2週間から28週間でした。

 2.2 成績と心肺機能の関係

学業成績と運動の関連性を調べた研究でも心肺機能が学業成績と強い相関を示していたそうです。アメリカのイリノイ大学が9歳~10歳の子供を対象に行った調査です。
子供たちの脳の画像検査を行い、運動能力との関係を調べました。すると、運動能力が高い子供たちは、脳の白質(はくしつ)により多くの線維があったそうです。

脳の白質は、主に神経細胞同士をつなぐ線維(神経細胞の枝)がある場所です。つまり、脳の各分野の連絡が密になっていたということです。この白質は、記憶や注意力に重要な働きをすると言われています。そして、この神経細胞の枝を包む鞘(ミエリン)というのが生まれた時にはあまり発達していません。ミエリンは、情報を早く伝えるためにとても重要です。
しかし、このミエリンが発達していないことによって、外からの刺激で、いろいろなところに神経細胞の枝を伸ばすことができるとされています。なので、子どもの時に学習を始めると新しいことを覚えやすいというわけです。

そして、このミエリンの発達に重要なのが、運動というわけです。
ハーバード大学のジョン・J・レイティ博士によると、心拍数を上げる運動だけではなく、身体を動かしながら頭を使うような運動や自らの動きを意識させる運動は脳に良い影響を与えるそうです。レイティ博士は、「遊びの要素を入れつつも『勝ち負けや競争しない』『普段使わない筋肉や関節を使う』『スキンシップや会話を促すような構成』が大切である」と述べています。

ただし、運動によって頭をよくするためには、2つの必須条件が…
1. 楽しんで行う事。
2. 運動はあくまで脳の学習の準備を整える役割なので、運動後に脳の血流が増え、思考力や集中力を増した時に、学習もすること
まぁ、当然と言えば当然ですよね。

元ネタはこちら
脳細胞が増える運動「3つの条件」
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2728964/Physically-fit-children-greater-brain-capacity-areas-important-memory-learning-study-finds.html
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0806/200806_040.html

2. 運動は落ち着きとリラックスをもたらす

運動は脳を活性化するわけですが、その一方で、落ち着きとリラックスという一見逆の働きのように思える効果も数多く報告されています

プリンストン大学の研究者たちがマウスで行った実験です。
マウスを2つのグループに分けます。
一方のマウスは自由に運動用の車輪を利用できるようにします。
そして、もう一方は動かずにじっとしているようにさせました。

そして、6週間後のマウスの状況を観察しました。
すると、運動をするマウスは、より探索好きで、可能であれば外で時間を過ごす傾向がありました。
これに対して運動不足のマウスは、まだ行ったことのない場所に近づくことに対して、恐れや不安を抱くようになったそうです。

マウスの脳を調べると、運動するマウスでは、新しい脳の神経細胞が多く作られていました。
しかも、運動するマウスでは、脳の活動を抑制して、過度の興奮を鎮める作用のある神経伝達物質であるγーアミノ酪酸(GABA)を放出することのできる神経細胞も多くみられました。
また、この神経細胞は、感情とかかわっている海馬の部位に集中していたそうです。

このことがどういう効果をもたらしたのでしょうか?

それを調べるために、マウスをストレスにさらしました。5分間冷水の中に置いたのです。
この場合においても、マウスたちの脳の反応は、「運動をしているかどうか」によって分かれました。

最初は、全てのマウスで、脳は著しい興奮状態になりました。
しかし、運動するマウスでは、すぐに恐れと不安がなくなりました。ストレスによる影響が長くは続かなかったのです。たくさんの数の脳の神経細胞がGABAを放出し、すぐに恐れや不安を静めることができたのです。
反対に運動不足のマウスは長い間、不安に悩まされていたのです。

相反するかのように思うかもしれませんが、運動は脳の活動を活発にする神経細胞も脳の過剰な興奮を抑える神経細胞も増やす働きがあるのです。
つまり、適度な運動を行うことは脳の活動を適切な状態に保つのに効果的ということでしょう。

脳の取扱説明書 p309

運動すると不安が鎮まる
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23637169

脳とこころの豆知識 - 運動

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